結論:はい、賃貸中の物件でも売却できます。入居者に退去してもらう必要はなく、賃貸借契約を引き継いだまま買主に売却する「オーナーチェンジ」という方法があります。ただし、居住用として売る場合と比べて売却戦略が異なるため、注意点を理解しておくことが大切です。
オーナーチェンジとは
オーナーチェンジとは、入居者(賃借人)がいる状態のまま、物件のオーナーだけが変わる売却方法です。賃貸借契約はそのまま新オーナーに引き継がれ、入居者は退去する必要がありません。
買主は購入後すぐに賃料収入を得られるため、投資用物件として購入する投資家や不動産オーナーが主なターゲットになります。福岡市では中央区・博多区・早良区の区分マンションを中心に、オーナーチェンジ物件の取引が活発です。
- 入居者に退去を求めなくてよい(立ち退き料が不要)
- 買主はすぐ賃料収入を得られ、投資家に魅力的
- 内覧が不要で、売却活動の負担が小さい
- 居住用より価格が低くなりやすい(目安7〜9割)
- 買主が投資家に限られる
- 賃料が相場より安いと、利回りが下がり価格も下がる
賃貸中に売るメリット
入居者に退去を求める必要がない。正当事由のない退去交渉は借地借家法28条で制限されており、無理に退去を求めると立ち退き料が必要になることもあります。オーナーチェンジなら退去の手間とコストが不要です。
購入後すぐに賃料収入が得られるため、投資家にとって魅力的。空室リスクがない状態で購入できるのは、投資家にとって大きなメリットです。入居実績があることで融資審査が通りやすくなる点も、買主候補を広げる要因になります。
内覧が不要。入居者がいるため室内を見せる必要がなく、売却活動中のストレスが少ないです。利回りや物件資料(レントロール)で投資判断をしてもらいます。
賃貸中に売るデメリット
居住用として売るより価格が低くなることが多い。投資用物件の価格は「利回り」で決まるため、居住用として売る場合よりも価格が低くなる傾向にあります(目安として居住用価格の7〜9割程度)。
買主が投資家に限定される。「自分で住みたい」という一般の購入者は対象外になるため、買主の母数が減ります。
賃料が相場より安い場合、利回りが下がる。長期入居者の場合、賃料が現在の相場よりも安くなっていることがあり、これが利回りを押し下げ、売却価格にも影響します。賃料の状況は査定前に確認しておきましょう。
価格の考え方
オーナーチェンジ物件の価格は、「年間賃料 ÷ 期待利回り」で算出されるのが基本です。
たとえば、月額賃料8万円(年間96万円)の物件を利回り6%で売る場合、96万円 ÷ 6% = 1,600万円が目安です。利回りの水準は物件の立地・築年数・賃料の安定性によって変わります。
一方、同じ物件を空室にして居住用として売る場合、2,000万円以上で売れる可能性もあります。オーナーチェンジと空室売却の価格差は、物件や地域によって200〜500万円程度になることがあります。
| 売却方法 | 価格の決まり方 | 目安 |
|---|---|---|
| オーナーチェンジ(賃貸中) | 利回りベース(年間賃料÷期待利回り) | 居住用の7〜9割程度 |
| 空室にして居住用で売却 | 実需ベース(周辺相場) | 市場価格どおり |
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退去後に売る場合との比較
退去を待ってから売ったほうが高く売れる可能性はありますが、リスクもあります。
退去までの期間が読めない。入居者がいつ退去するかはわかりません。退去を待つ間、固定費(管理費・修繕積立金・固定資産税)がかかり続けます。
退去後にリフォームが必要になる場合がある。長期入居後は室内が劣化していることが多く、居住用として売るためにはリフォーム費用がかかることがあります。
判断のポイント:「オーナーチェンジでの売却価格」と「退去後の居住用売却価格」の差が大きく(目安として100万円以上)、かつ退去の目処が1〜2年以内に立っている場合は、退去を待つ価値があります。差が小さい場合や退去見込みが不明な場合は、すぐに売却したほうが合理的です。
- 価格差が大きい(目安100万円以上)かつ、退去の目処が1〜2年以内に立っている退去を待つ価値あり
- 価格差が小さい、または退去の見込みが分からない待つ間も管理費・修繕積立金・固定資産税がかかる今売る方が合理的
- 定期借家契約契約満了で退去してもらえる満了に合わせて居住用で
定期借家契約の場合
契約が定期借家契約の場合、契約満了で退去してもらえるため、満了時期に合わせて居住用として売却する計画が立てやすくなります。現在の契約種別を確認しておきましょう。
売却の流れ
- 収益情報を整理する現在の賃料・管理費・修繕積立金・固定資産税などの収支情報をまとめます。レントロール(賃料一覧表)があると査定がスムーズです。
- 不動産会社に査定を依頼するオーナーチェンジと空室売却の両方の査定額を出してもらい、比較します。
- 売却方法を決定する価格差やご自身の事情を踏まえて、オーナーチェンジか退去後の売却かを決めます。
- 売却活動・成約オーナーチェンジの場合、投資家向けの販売チャネルを活用します。
- 入居者への通知引き渡し(所有権移転)に合わせて、入居者にオーナーが変わる旨と賃料の振込先を通知します。入居中の建物の賃貸人の地位と敷金の返還義務は民法605条の2により新オーナーへ引き継がれるため、敷金の精算は新旧オーナー間で行います。
「賃貸中の物件を売却する際は、「今すぐ売るか」「退去を待つか」の判断が重要です。両方の査定額を比較したうえで、ベストな方法をご提案いたします。」
Base-up 久保 塁海外にお住まいで、福岡の賃貸物件を売りたい方は、海外在住者の不動産売却の手続きで、国内での準備に加えて確認する事項をご覧ください。
よくある質問
Q. 入居者に売却のことを伝える必要はありますか?
売却活動中は伝える必要はありません。引き渡し(所有権移転)に合わせて、オーナーが変わる旨と賃料の振込先を入居者に通知するのが実務です。入居中の建物の賃貸人の地位は民法605条の2により新オーナーへ移るため、入居者の生活には影響がありません。
Q. 入居者を退去させてから売ることはできますか?
普通借家契約の場合、借地借家法28条により正当事由がない限り貸主から一方的に退去を求めることはできません。立ち退き料を支払って合意退去する方法もありますが、費用がかかります。定期借家契約であれば契約満了時に退去してもらうことが可能です。
