会社の業績悪化、リストラ、転職による減収——突然の収入減で住宅ローンの返済が厳しくなるケースは、誰にでも起こりえます。この記事では、「売却する前にできること」も含めて、取りうる選択肢を整理します。
減収で住宅ローンが厳しいときの心構え
まず押さえていただきたいのは、「延滞する前に動くこと」が何よりも重要だということです。
住宅ローンを1〜2か月延滞すると、金融機関から督促が届きます。3か月以上延滞が続くと、個人信用情報に「延滞」が記録され、将来のローン審査やクレジットカードの利用に影響します。さらに6か月を超えると、期限の利益が喪失され、残債の一括返済を求められる可能性があります。
「返せなくなりそう」と感じた段階で行動すれば、選択肢は広がります。一人で抱え込まず、金融機関や専門家に相談してください。
売却「以外」の選択肢を先に検討する
住宅ローンの返済が厳しいからといって、すぐに売却する必要はありません。以下の選択肢を先に検討してください。
| 選択肢 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 返済条件の変更 | 金融機関に相談して月々の返済額を一時的に減額する | 減収が一時的で、回復の見込みがある |
| 住宅ローンの借換え | 金利の低いローンに借り換える | 金利差が大きく、借換え費用を回収できる |
| 家計の見直し | 固定費の削減・副収入の確保 | 返済額の調整幅が小さくて済む |
| 一部繰上返済の中止 | 毎月の繰上返済をストップして手元資金を確保 | 繰上返済をしていた場合 |
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金融機関への相談 — 返済条件の変更
住宅ローンの返済が厳しくなった場合、最初にすべきことは金融機関への相談です。金融機関は「延滞されるよりも、条件変更に応じたほうがいい」と考えているため、早期に相談すれば柔軟に対応してくれることが多いです。
返済条件の変更(リスケジュール)で可能な対応例:
・ 返済期間の延長(月々の返済額を減額)
・ 一定期間の元金据置き(利息のみ返済)
・ ボーナス払いの中止・変更
相談時に持っていくもの
(1) 現在の収入がわかる書類(給与明細・源泉徴収票) (2) 家計の収支表 (3) ローンの返済予定表 (4) 転職活動中なら求職状況がわかるもの
住宅ローンの借換え
現在のローン金利が高い場合、低金利のローンに借り換えることで月々の返済額を減らせる可能性があります。
ただし、借換えには諸費用(事務手数料・保証料・登記費用など)が30〜80万円程度かかります。金利差が0.5%以上あり、残りの返済期間が10年以上ある場合は、借換えの効果が出やすいと言われています。
注意点として、減収後の収入で借換え審査に通るかどうかが問題です。転職直後や失業中は、借換え審査のハードルが高くなります。
売却を選ぶ場合の判断基準
返済条件の変更や借換えでは対応しきれない場合、売却が現実的な選択肢になります。売却を検討すべきタイミングの目安は以下のとおりです。
・ 返済条件を変更しても月々の返済が家計を圧迫する
・ 減収が長期化する見込みで、回復の見通しが立たない
・ 物件の売却代金でローンを完済できる(アンダーローン)
・ 住み替え先(賃貸など)の家賃のほうがローン返済額より低い
売却代金でローンを完済できる場合は、手元に残る資金を生活の立て直しに充てることで、経済的な再スタートが切れます。
オーバーローンの場合 — 任意売却という選択肢
売却代金がローン残債を下回る「オーバーローン」の状態では、通常の方法では売却できません。このとき検討すべきが任意売却です。
任意売却は、金融機関の同意を得て抵当権を外してもらい、市場に近い価格で売却する方法です。売却後の残債は、金融機関と交渉して分割返済の計画を立てます。
任意売却は競売よりも売却価格が高くなるため、残債を少なく抑えることができます。延滞が続いて競売に進む前に、早めに検討してください。
減収後の資金計画の立て直し方
減収を機に、家計全体を見直すことが重要です。
1. 固定費の削減——保険の見直し、通信費の削減、サブスクリプションの整理など、毎月自動的に出ていくお金を減らします。
2. 住居費の最適化——住居費(ローン返済額または家賃)が手取り収入の25%を超えている場合は、住居の見直しを検討してください。
3. 公的支援制度の活用——住居確保給付金(失業等で住居を失うおそれがある方向けの家賃補助)や、緊急小口資金(一時的な生活費の貸付)などの制度があります。
4. 専門家への相談——無料で利用できる相談窓口として、法テラス(法律相談)、消費生活センター、ファイナンシャルプランナーの無料相談会などがあります。
よくある質問
Q. 住宅ローンの返済が遅れると信用情報にどう影響しますか?
一般的に、61日以上の延滞で個人信用情報機関に「異動情報(事故情報)」として登録されます。登録されると5年程度は新たなローンやクレジットカードの審査が通りにくくなります。
Q. リストラされた場合、住宅ローン控除は受けられますか?
住宅ローン控除は所得税から控除するため、年の途中で退職して所得がない場合は控除額が減少または0になります。再就職した翌年からは再び適用を受けられます。
Q. 家を売却して賃貸に移るのは「後退」ではないですか?
家計を圧迫するローン返済を続けて精神的・経済的に追い詰められるよりも、売却して身軽になるほうが合理的なケースは多くあります。住居は「所有」だけが正解ではありません。
「減収やリストラは予測できないものです。大切なのは、状況が悪化する前に動くこと。延滞する前にご相談いただければ、選択肢は必ず残っています。」
Base-up 久保 塁