「親が亡くなって実家が空き家になった」「施設に入ったので家を処分したい」——いわゆる「実家じまい」は、片付け・相続手続き・売却と、やるべきことが多岐にわたります。この記事では、全体の流れを時系列で整理し、つまずきやすいポイントを解説します。
実家じまいとは何か — なぜ今注目されているのか
「実家じまい」とは、親が住まなくなった実家を片付け、売却または解体して処分することを指します。少子高齢化や核家族化の進行で、実家を引き継ぐ子世代が減少しており、空き家問題の解決手段として注目されています。
総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は約900万戸。そのうち「その他の住宅」(利用目的のない空き家)は約385万戸に達しています。実家じまいは、個人の問題であると同時に社会的な課題でもあるのです。
全体の流れ — 5つのステップ
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1. 片付け・遺品整理 | 家財の仕分け・処分・遺品整理業者の手配 | 1〜3か月 |
| 2. 相続手続き・名義変更 | 遺産分割協議・相続登記 | 2〜6か月 |
| 3. 査定・方針決定 | 不動産会社に査定を依頼・売却方針を決める | 1〜2週間 |
| 4. 売却活動 | 売り出し・内覧・価格交渉 | 2〜6か月 |
| 5. 契約・引き渡し・確定申告 | 売買契約・決済・翌年の確定申告 | 1〜2か月+翌年3月 |
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すべてを合計すると、半年〜1年半程度が一般的な期間です。急ぐ必要はありませんが、空き家のまま放置すると維持コストがかかり続けるため、方針だけは早めに決めることをお勧めします。
ステップ1:片付けと遺品整理
実家じまいで最も心理的ハードルが高いのが「片付け」です。親の思い出が詰まった品々を処分することに、罪悪感を覚える方も少なくありません。
片付けのコツは、「残すもの」を先に決めること。写真・手紙・家族の記録など、本当に大切なものだけを選び、それ以外は処分・リサイクル・寄付に回します。
遺品整理業者を使う場合の費用目安
一戸建て3LDK〜4LDKの場合、15〜40万円程度が相場です。仕分けから搬出・処分まで1〜2日で完了します。自分で片付ける時間がない場合は検討してください。
ステップ2:相続手続きと名義変更
実家を売却するには、名義が売主本人(相続人)に変更されている必要があります。親名義のままでは売却できません。
相続登記は2024年4月から義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しなければ、過料(10万円以下)の対象になります。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で「誰が不動産を取得するか」を決める必要があります。全員の合意が得られない場合は、家庭裁判所での調停という手段もありますが、時間と費用がかかるため、できれば話し合いで解決することを目指しましょう。
ステップ3:不動産の査定と方針決定
名義変更が完了したら(あるいは並行して)、不動産会社に査定を依頼します。査定は無料で、売却を決めていなくても相談できます。
査定結果をもとに、「売却」「解体して土地として売却」「賃貸に出す」のいずれかを決めます。建物が古い場合は、解体費用と土地としての売却価格を比較して判断します。
| 選択肢 | 向いているケース |
|---|---|
| 建物付きで売却 | 築年数が浅い・リフォーム済み・構造がしっかりしている |
| 解体して土地で売却 | 築40年以上・大規模な修繕が必要・買主が建物不要 |
| 賃貸に出す | 立地が良い・リフォームすれば賃貸需要がある |
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ステップ4:売却活動と内覧対応
実家が遠方にある場合、内覧対応は不動産会社に任せることができます。鍵を預けておけば、売主が毎回立ち会う必要はありません。
詳しくは「内覧のポイント」をご覧ください。
空き家の場合、室内の清掃と換気は定期的に行いましょう。水道の通水もしておくと、排水管の臭いを防げます。不動産会社に管理を依頼することも可能です。
ステップ5:契約・引き渡し・確定申告
買主が決まったら売買契約を締結し、決済・引き渡しに進みます。相続した物件を売却して利益が出た場合、翌年に確定申告が必要です。
相続した物件の売却では、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が使える場合があります。相続税を支払った方は、相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を減らせる制度です。相続開始から3年10か月以内の売却が条件です。
実家じまいでよくあるトラブルと対処法
兄弟間の意見の不一致——「売りたい人」と「残したい人」で揉めるケースです。感情論になる前に、空き家の年間維持コストを数字で共有し、「保有し続けるコスト vs 売却して分配する金額」で比較すると、合意しやすくなります。
残置物の処分トラブル——「捨てるな」と言っていた兄弟が、実際の片付けには参加しないケースがあります。期限を決めて「この日までに引き取らないものは処分する」と書面で通知しておくと、後のトラブルを防げます。
境界が未確定——古い一戸建てでは境界が確定していないことがあります。売却前に確定測量を行い、隣地所有者の合意を得ておく必要があります。
よくある質問
Q. 実家の片付けを業者に頼むと費用はいくらかかりますか?
3LDK〜4LDKの一戸建てで15〜40万円程度が相場です。荷物の量、処分品の種類(家電リサイクル対象品など)、搬出の難易度によって変わります。相見積もりを取ることをお勧めします。
Q. 相続登記をしないと売却できませんか?
売却できません。買主への所有権移転登記の前提として、相続登記が必要です。2024年4月からは義務化されているため、早めに手続きしてください。
Q. 空き家の固定資産税はどのくらいですか?
建物が残っている場合、住宅用地の特例により土地の固定資産税は最大1/6に軽減されています。ただし、管理不全で「特定空き家」に指定されると、この軽減が外れて最大6倍になります。
「実家じまいは、ご家族の歴史を整理する作業でもあります。感情面のケアも大切にしながら、一つひとつのステップを一緒に進めていきましょう。」
Base-up 久保 塁