物件の前面道路が私道である場合、売却時に特有のハードルが発生します。通行権の確認、掘削同意書(上下水道工事のために私道を掘る同意)の取得、私道の維持管理費の負担など、公道に面した物件では発生しない手続きが必要です。
この記事では、私道持分のある物件を売却するために知っておくべきポイントを解説します。
私道と公道の違い
道路は大きく公道(国・都道府県・市区町村が管理)と私道(民間の個人や法人が所有)に分けられます。
| 項目 | 公道 | 私道 |
|---|---|---|
| 所有者 | 国・自治体 | 個人・法人 |
| 維持管理 | 自治体が負担 | 所有者が負担 |
| 通行 | 自由 | 所有者の許可が必要な場合あり |
| 掘削工事 | 自治体への申請で可能 | 所有者の同意が必要 |
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見た目では公道か私道か判別できないことも多いです。法務局の公図や市区町村の道路台帳で確認できます。
私道持分とは
私道持分とは、私道の所有権の一部を持っていることです。一般的に、私道に面した各宅地の所有者が私道を共有しており、それぞれ持分(例:6分の1)を有しています。
私道持分がある場合は、自分も通行・掘削の権利を持っているため、他の共有者の同意を得やすくなります。逆に、私道持分がなく「通行地役権」だけの場合は、売却時のハードルが高くなります。
通行権の確認
私道に面した物件の買主が最も気にするのは「自由に通行できるか」です。通行権には以下の種類があります。
1. 私道の共有持分がある場合:共有者として通行権があります。ただし、車両通行については別途取り決めが必要な場合もあります。
2. 通行地役権が設定されている場合:登記簿に記載されていれば、第三者にも対抗できる(権利を主張できる)ため安心です。
3. 黙示の通行権:長年にわたり通行してきた実績がある場合に認められることがありますが、権利の証明が難しく、紛争になるリスクがあります。
通行権の紛争があると売却が困難に
私道の所有者との間で通行権に関するトラブル(通行妨害・通行料の請求等)がある場合、買主は購入を敬遠します。トラブルがある場合は、売却前に解決しておくことが理想です。弁護士への相談が必要になるケースもあります。
掘削同意書の取得
掘削同意書とは、上下水道やガスの配管工事のために私道を掘削することを、私道の所有者(共有者全員)が同意する書面です。
買主が将来的に建て替えやリフォームをする際に配管工事が必要になるため、掘削同意書がなければ住宅ローンの審査が通らない金融機関があります。
掘削同意書の取得手順は以下の通りです。
1. 私道の共有者全員を登記簿で確認する
2. 各共有者に書面で同意を依頼する
3. 署名・押印を得る(実印+印鑑証明書が理想)
共有者が多い場合(6〜10名以上)や、所在不明の共有者がいる場合は、取得に数ヶ月かかることもあります。売却を決めたら早めに着手しましょう。
福岡市の対応
福岡市では、一定の条件を満たす私道は「位置指定道路」や「2項道路」として建築基準法上の道路に認められています。市の道路台帳で確認でき、道路としての地位が確保されていれば建築確認は取得可能です。ただし、掘削同意は別途必要です。
私道が売却に与える影響
私道に面した物件は、公道に面した物件と比べて以下の影響があります。
価格面:公道に面した物件と比べて5〜15%程度安くなる傾向があります。掘削同意書が取得できない場合はさらに下がります。
売却期間:私道持分あり+掘削同意書ありなら通常と大差ありませんが、持分なし・同意書なしの場合は売却期間が2〜3倍に延びることがあります。
ローン審査:私道持分と掘削同意書があれば通常の審査基準ですが、いずれかが欠けるとローン不可になる金融機関もあります。
売却をスムーズにする対策
1. 掘削同意書を事前に取得する。売り出し前に取得できていれば、買主の不安がなくなり成約率が上がります。
2. 私道の維持管理状況を整理する。過去の舗装・補修費用の負担実績、管理の取り決め(覚書等)があれば資料として準備しましょう。
3. 私道持分を登記簿で確認する。持分があると思っていたのに登記上は持分がなかった——というケースがあります。事前に確認してください。
4. 位置指定道路かどうか確認する。市の建築指導課で確認できます。位置指定道路であれば建築基準法上の道路として認められ、買主の安心感が増します。
よくある質問
Q. 私道持分がない物件でも売れますか?
売れますが、ハードルは高くなります。通行権や掘削同意書の有無が重要になります。持分がなくても通行地役権が設定されていればローンが通る場合があります。
Q. 私道の補修費用は誰が負担しますか?
共有者全員で負担するのが原則です。取り決めがない場合は、持分に応じた按分が一般的です。負担割合の書面があると買主に説明しやすくなります。
Q. 私道持分を売却せずに、建物と宅地だけ売ることはできますか?
法的には可能ですが、買主にとっては私道持分がない状態になるため敬遠されます。通常は私道持分も含めて売却します。
「私道に面した物件は、事前準備の差が売却の成否を分けます。掘削同意書の取得、通行権の確認、持分の登記確認——この3つを先に済ませておくことで、スムーズな売却が可能になります。」
Base-up 久保 塁