一戸建てや土地を売却する際、多くの方が驚くのが境界確定が必要」という事実です。自分の土地の境界は分かっているつもりでも、法的に確定しているかどうかは別の話。境界が確定していないと、買主が住宅ローンを組めない、引き渡し後にトラブルが起きるなど、売却そのものが進まなくなるリスクがあります。

このページでは、境界確定と測量について、種類・費用・期間・よくあるトラブルを整理します。

なぜ境界確定が必要なのか

境界が「曖昧」な土地は売りにくい

古い住宅地では、隣地との境界が明確に決まっていないケースが少なくありません。「ブロック塀の中心が境界だと思っていた」「お隣との口約束で決めていた」——こうした曖昧な状態では、買主が安心して購入できません。

特に問題になるのが住宅ローンです。金融機関は融資の際に物件の担保評価を行いますが、境界が確定していない土地は正確な面積が分からず、担保評価ができない=ローンが組めないことがあります。ローンが組めなければ買主は購入できず、売却は成立しません。

登記簿の面積と実際の面積が違うことがある

登記簿に記載されている面積は、何十年も前の測量(または推定)に基づいている場合があります。実際に測量してみると、登記簿より広かったり狭かったりすることは珍しくありません。面積が正確でなければ、売買価格の根拠も曖昧になります。

マンションの場合は不要

マンション(区分所有建物)の売却では、境界確定や測量は通常不要です。土地の区画は管理組合の管理下にあり、個別の区分所有者が境界を確定する必要はありません。境界確定が必要なのは、一戸建て・土地・収益物件(1棟)など、「土地を個別に所有している」場合です。

整備された更地

測量の種類と違い

測量にはいくつかの種類がありますが、不動産売却に関係するのは主に以下の3つです。

種類内容費用目安期間
現況測量現在の状態をそのまま測量。境界の確定は行わない。面積の概算を知りたいときに実施10〜20万円1〜2週間
境界確定測量
(民民のみ)
隣接する民有地の所有者全員と境界を確認・合意。官有地(道路等)は含まない30〜50万円1〜2ヶ月
境界確定測量
(官民含む)
隣接する全ての土地(民有地+官有地)の境界を確定。最も正式で信頼性が高い50〜80万円2〜4ヶ月

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不動産売却では、通常境界確定測量(官民含む)」が求められます。隣地との民民境界だけでなく、道路との官民境界も確定させることで、買主・金融機関双方が安心できる状態を作ります。

確定測量図」があれば不要な場合も

過去に境界確定測量を実施し、「確定測量図」が作成されている場合は、改めて測量を行う必要がない場合があります。ただし、測量図が古い場合(20年以上前など)や、その後に隣地の状況が変わっている場合は、再度の測量を求められることもあります。手元に測量図がある方は、まず不動産会社に確認してください。

境界確定測量の流れ

1

土地家屋調査士への依頼

境界確定測量は土地家屋調査士が行います。不動産会社が提携先を紹介するのが一般的です。依頼時に、登記簿謄本・公図・過去の測量図などの資料を確認します。

2

現地調査・仮測量

現地で既存の境界標(杭・プレート)の有無を確認し、仮の測量を実施。隣接地の所有者と境界の位置について事前の打ち合わせを行います。

3

隣接地所有者との立会い

隣接する全ての土地所有者に立ち会ってもらい、境界の位置を現地で確認・合意します。全員の合意が得られないと確定できません。官有地(道路など)の場合は、市区町村の担当部署との立会いも必要です。

4

境界標の設置

合意された位置に境界標(コンクリート杭・金属プレートなど)を設置します。これにより、境界が物理的にも明確になります。

5

確定測量図の作成・筆界確認書への署名

確定した境界に基づいて正式な測量図を作成。隣接地所有者と「筆界確認書」に署名・押印します。これが売却時に買主・金融機関に提出する書類になります。

費用と期間の目安

福岡市内の一般的な住宅地における境界確定測量の費用と期間の目安は以下の通りです。

条件費用目安期間
隣接2〜3筆・官民境界なし30〜40万円1〜1.5ヶ月
隣接3〜5筆・官民境界あり50〜70万円2〜3ヶ月
隣接多数・旗竿地・変形地70〜100万円3〜4ヶ月
境界トラブルあり(※)80万円〜4ヶ月〜

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※隣地所有者が合意しない場合は、「筆界特定制度」(法務局)や裁判(境界確定訴訟)が必要になることがあり、費用・期間ともに大幅に増加します。

費用は売主の負担が原則です。売却経費として譲渡所得の計算時に控除できるため、確定申告の際に忘れずに計上してください。

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隣地との境界トラブルと対処法

境界確定測量で最も時間がかかるのが、隣地所有者との合意形成です。よくあるトラブルと対処法を整理します。

トラブル① 隣地所有者が立会いに応じない

「忙しい」「関心がない」「関係が悪い」などの理由で、隣地所有者が立会いを拒否するケースがあります。この場合、土地家屋調査士が粘り強く交渉することが基本ですが、どうしても合意できない場合は、法務局の「筆界特定制度」を利用する方法があります。

トラブル② 隣地所有者が遠方・不明

相続が繰り返されて隣地の所有者が分からない、あるいは遠方に住んでいて連絡が取れないケース。登記簿から所有者を調査し、書面で連絡するところから始めます。所有者不明の場合は、筆界特定制度や裁判が必要になることもあります。

トラブル③ 境界の位置で意見が食い違う

「うちの塀はもっとこっちだったはず」「昔は境界標があったが無くなった」——こうした食い違いが生じた場合、過去の公図・航空写真・建築確認申請書類などの資料を突き合わせて、客観的な根拠に基づいて合意を目指します。

境界トラブルは「告知義務」の対象

隣地との間に境界トラブルがある場合、売主はその事実を買主に告知する義務があります。隠して売却すると、後に契約不適合責任を問われる可能性があります。トラブルがある場合は、売却前に解決するか、解決できない場合は正直に開示した上で売却することが重要です。

測量のタイミング

住宅地の土地区画

境界確定測量は「売却を決めてから」ではなく「売却を検討し始めた段階」で着手することをお勧めします。理由は3つです。

① 時間がかかる——官民境界の確定を含めると2〜4ヶ月。売却活動と並行して進めることはできますが、買主が見つかってから測量を始めると、引き渡しまでの期間が長くなり、買主を逃すリスクがあります。

② 面積が確定しないと正確な査定ができない——土地の売却では、面積が価格に直結します。登記簿面積と実測面積に差がある場合、正確な面積が分からなければ、正確な査定もできません。

③ トラブルが発覚しても対応する時間がある——隣地との境界に問題が見つかった場合、早い段階であれば交渉の時間を確保できます。「買主が待っている」という状況での交渉は、不利になりがちです。

「査定のご依頼をいただいた際、一戸建てや土地の場合は必ず境界の状況を確認します。確定測量図がなければ、信頼できる土地家屋調査士をご紹介し、査定と並行して測量を進める段取りをお手伝いします。測量が完了してから売り出す方が、結果的に売却はスムーズに進みます」

Base-up 代表 久保 塁