1階が店舗や事務所、2階以上が住居——いわゆる店舗付き住宅(事務所付き住宅)は、一般的な一戸建てとは売却の仕組みが異なります。用途が特殊なため買主が限られますが、需要がないわけではありません。

この記事では、店舗付き・事務所付き住宅を売却するために知っておくべきポイントを解説します。

店舗付き住宅の特徴と種類

店舗付き住宅は大きく分けて2つのタイプがあります。

併用住宅:建物の一部が店舗・事務所、残りが住居。住居部分の面積が建物全体の50%以上であれば「住宅」として扱われる制度上のメリットがあります。

兼用住宅:住居の一部を店舗・事務所として使用。部屋の一室を事務所にしているケースなど。

福岡市では、商店街沿いの店舗付き住宅や、住宅街の中で美容室・整骨院・学習塾などを営む物件がよく見られます。

用途制限と法規制の確認

店舗付き住宅を売却する際は、用途地域による制限を確認する必要があります。

用途地域店舗の可否
第一種低層住居専用地域50㎡以下の店舗のみ可(住居兼用に限る)
第一種中高層住居専用地域500㎡以下の店舗可
第二種中高層住居専用地域1,500㎡以下の店舗可
近隣商業地域・商業地域制限なし

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特に注意すべきは、第一種低層住居専用地域にある店舗付き住宅です。現在は「既存不適格」として営業が認められていても、買主が用途を変更しようとすると制限を受ける場合があります。

住宅ローンの適用条件

店舗付き住宅でも、住居部分の面積が建物全体の50%以上であれば住宅ローンが利用できる金融機関が多いです。ただし、店舗部分には住宅ローンが適用されず、事業用ローン(プロパーローン)との併用になる場合があります。

住宅ローンが使える物件と使えない物件では、買主の資金調達の難易度が大きく異なり、売却スピードと価格に直接影響します。

住居部分の割合を確認する方法

建築確認済証や登記簿の用途欄に「居宅・店舗」と記載されています。面積按分は確認済証の図面で確認できます。手元にない場合は、市役所の建築確認台帳で調べることが可能です。

買主の特徴とターゲット

店舗付き住宅の買主は、主に以下の層です。

1. 開業予定者:自宅兼店舗として使いたい美容師、整体師、パン屋、カフェ経営者など。初期投資を抑えたい個人事業主に人気です。

2. 投資家:1階を店舗として貸し出し、2階を住居として貸す(または自分で住む)賃貸併用型として購入します。

3. 事業承継者:既存の営業権ごと引き継ぎたい同業者(居抜きでの引き渡し)。

4. 解体して新築する買主:土地の価値に注目して購入し、解体して住宅や別の用途に建て替える層。

価格設定の考え方

店舗付き住宅の価格設定は、住居部分と店舗部分を分けて考えるのが基本です。

住居部分は同エリアの一戸建て相場をベースに算出し、店舗部分は賃貸した場合の収益(想定家賃×利回り)で算出します。両者を合算した金額が目安になります。

ただし、店舗部分の状態(内装の劣化、設備の有無)によって大きく変動するため、不動産会社の訪問査定が特に重要な物件種別です。

売却を成功させる5つのポイント

1. 居抜きか原状回復か決める。店舗設備(厨房機器、エアコン、看板等)をそのまま残す「居抜き」の方が、同業の買主には喜ばれます。

2. 用途地域と許可の確認を事前に行う。買主からの質問に即答できるよう準備しておきましょう。

3. 事業用の不動産ポータルにも掲載する。住宅系のサイトだけでなく、テナント・事業用物件専門サイトにも掲載すると買主の幅が広がります。

4. 賃貸中の場合はオーナーチェンジも検討する。テナントが入居中であれば、オーナーチェンジとして投資家向けに売却できます。

5. 解体費用の見積もりを取っておく。建物が古い場合、買主は解体費用を気にします。事前に見積もりを取っておくと、交渉がスムーズです。

営業許可・届出の引き継ぎ

飲食店や美容室などの営業許可は人(営業者)に紐づくものであり、物件に付随しません。買主が同じ業種で開業する場合は、新たに許可を取得する必要があります。これは売主の責任ではありませんが、買主に伝えておくとトラブルを防げます。

よくある質問

Q. 店舗を閉めてから売った方がいいですか?

一概には言えません。営業中の方がテナント需要を示せるためプラスになることもあります。店舗閉鎖後に空き店舗として放置すると、建物の劣化が進みやすくなります。

Q. 店舗付き住宅は仲介手数料が高くなりますか?

仲介手数料の計算方法は通常の不動産と同じです(成約価格×3%+6万円+消費税が上限)。

Q. 固定資産税は住宅より高いですか?

店舗部分には住宅用地の特例(固定資産税が1/6になる軽減)が適用されないため、住居のみの物件より固定資産税が高くなることがあります。

「店舗付き住宅は「住みたい人」だけでなく「事業をしたい人」にも訴求できる物件です。ターゲットを広げることで、思わぬ高値で売れることもあります。」

Base-up 久保 塁