「同じ面積の土地なのに、なぜこんなに価格が違うのか」――その答えのひとつが用途地域です。用途地域とは、都市計画法に基づいて定められた土地の利用規制であり、「何が建てられるか」「どのくらいの大きさの建物が建てられるか」を決めるものです。不動産の売却価格に直結する重要な要素を解説します。

用途地域とは — なぜ価格に影響するのか

用途地域は、「この土地にはどんな建物を建ててよいか」を法律で定めたルールです。住宅地として静かな環境を守るエリアもあれば、商業ビルやマンションを自由に建てられるエリアもあります。

不動産の価格に影響する理由は主に2つです。

(1) 建てられる建物の種類が違う:商業地域ではマンションや店舗ビルが建てられますが、第一種低層住居専用地域では2階建ての戸建てが上限になるケースがほとんどです。

(2) 容積率・建ぺい率が違う容積率が高いほど延床面積を大きく取れるため、同じ広さの土地でもマンション用地は戸建て用地より高くなる傾向があります。

用途地域は「土地のポテンシャル」を決める

同じ100坪の土地でも、容積率200%と容積率400%では、建てられるマンションの規模がまったく違います。この「ポテンシャルの差」が、そのまま価格の差になります。

13種類の用途地域と特徴

用途地域は全部で13種類あり、大きく「住居系」「商業系」「工業系」に分類されます。

分類用途地域主な特徴建てられるもの
住居系第一種低層住居専用地域最も規制が厳しい。閑静な住宅街戸建て、小規模店舗(50㎡以下)
住居系第二種低層住居専用地域小規模店舗・飲食店が可能戸建て、小規模店舗(150㎡以下)
住居系第一種中高層住居専用地域中規模マンション・学校が建てられるマンション、病院、大学
住居系第二種中高層住居専用地域事務所ビルも一部可能上記に加え、事務所(1,500㎡以下)
住居系第一種住居地域ホテル・パチンコ店は不可マンション、店舗、事務所
住居系第二種住居地域パチンコ店・カラオケ店も可能上記に加え、遊戯施設
住居系準住居地域幹線道路沿い。車関連施設も可自動車修理工場、倉庫
住居系田園住居地域農地と住宅の共存戸建て、農産物直売所
商業系近隣商業地域日用品店舗が中心ほぼすべての建物
商業系商業地域最も規制が緩いほぼすべての建物(工場除く)
工業系準工業地域住宅・工場が混在住宅、工場、倉庫
工業系工業地域住宅も建てられる住宅、工場
工業系工業専用地域住宅は建てられない工場、倉庫のみ

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用途地域別の価格傾向

一般的に、以下の傾向があります。

最も高い:商業地域 — 容積率が高く、マンションや商業ビルが建てられるため、土地のポテンシャルが最大。天神・博多駅周辺が該当。

次に高い:第一種低層住居専用地域(人気エリア) — 意外かもしれませんが、百道や大濠公園周辺のような高級住宅街は、規制が厳しいからこそ「静かな環境が守られる」として高値で取引されます。

中程度:第一種中高層住居専用地域、近隣商業地域 — マンション建設が可能で、かつ住環境も一定レベルに保たれるバランス型。

安い傾向:工業地域、準工業地域 — 住環境の面で評価が低くなりがちですが、開発の自由度が高いため、事業用地としての需要はあります。

福岡市の用途地域の特徴

福岡市の用途地域配置には、いくつかの特徴があります。

(1) 天神・博多駅周辺は商業地域:容積率800〜1,000%が設定されており、高層マンション・オフィスビルが建ち並ぶ地域です。天神ビッグバンでは容積率のさらなる緩和も行われています。

(2) 地下鉄沿線は中高層住居地域が多い:空港線・箱崎線・七隈線の沿線は、第一種・第二種中高層住居専用地域が帯状に広がっています。

(3) 郊外は低層住居地域と第一種住居地域が混在:早良区南部、西区、城南区の一部は、低層住居地域が広がる閑静な住宅街です。

(4) 臨海部は準工業地域が多い:東区・博多区の臨海部は、倉庫・工場と住宅が混在する準工業地域が広がっています。

自分の物件の用途地域を調べる方法

ご自身の物件がどの用途地域に属しているかは、以下の方法で確認できます。

(1) 福岡市の都市計画情報システム:福岡市のウェブサイトで公開されている「まちづくり支援システム」から、住所を入力して用途地域を確認できます。無料です。

(2) 不動産会社に確認:査定時に用途地域の確認も行いますので、ご自身で調べるのが難しい場合はお気軽にご相談ください。

(3) 法務局で登記情報を確認:登記簿には用途地域は記載されていませんが、地番から自治体の都市計画図を確認することで特定できます。

用途地域の変更に注意

用途地域は、都市計画の見直しにより変更されることがあります。特に、再開発エリアでは容積率の引き上げ(=価値の上昇)が行われるケースもあります。逆に、住居系に変更されると商業利用ができなくなることもあるため、最新の情報を確認しましょう。

詳しくは「福岡市の再開発マップ」をご覧ください。

用途地域を活かした売却戦略

用途地域は、売却戦略を考えるうえでの基本情報です。以下のケースでは、用途地域を意識した戦略が特に有効です。

ケース1:容積率が高い土地 — マンションデベロッパーへの売却を検討しましょう。個人の購入者(戸建て建築目的)よりも高い価格が提示される可能性があります。

ケース2:低層住居専用地域の土地 — 「閑静な住宅街」「日照が確保される」といった住環境の良さをアピールしましょう。規制の厳しさがプラスに働くエリアです。

ケース3:商業地域の物件 — 居住用だけでなく、事業用(事務所・店舗)としての需要も視野に入れて販売活動を行いましょう。

ケース4:準工業地域の土地 — 住宅用地としてだけでなく、倉庫・作業場としての需要もあります。事業者向けのチャネルも活用しましょう。

用途地域の「境界」にある土地

敷地が2つの用途地域にまたがっている場合、面積の大きいほうの規制が適用される原則がありますが、実際にはケースバイケースです。売却前に建築可能な条件を確認しておくことが重要です。

よくあるご質問

Q. 用途地域は自分で変更できますか?

個人で変更することはできません。用途地域は都市計画法に基づき自治体が決定するものです。ただし、都市計画の見直し時に変更されることがあります。

Q. 用途地域を知らなくても売却できますか?

売却自体は可能ですが、用途地域は重要事項説明で必ず説明する項目です。また、用途地域を理解していないと適正な価格設定ができない可能性があります。

Q. 同じ住所なのに隣の土地と用途地域が違うことはありますか?

あります。用途地域の境界は道路や地形に沿って引かれるため、隣接する土地でも異なる用途地域に属することがあります。この場合、建てられる建物や容積率が変わるため、価格にも差が出ます。

Q. 用途地域が「第一種低層住居専用地域」だと売りにくいですか?

一概には言えません。百道や大濠公園周辺のような人気エリアでは、規制が厳しいからこそ住環境が守られ、高値で取引されています。エリアの人気度と用途地域の組み合わせで判断する必要があります。

Q. 容積率が高いと必ず高く売れますか?

必ずしもそうではありません。容積率が高くても、道路幅員や日影規制など他の制限で実際に建てられる面積が制限される場合があります。また、マンション用地としての需要がないエリアでは、高い容積率が価格に反映されないこともあります。

「用途地域は不動産の「ルールブック」です。ルールを知ることで、物件の本当の価値が見えてきます。お手持ちの不動産の用途地域や容積率が価格にどう影響するか、お気軽にご相談ください。」

Base-up 久保 塁

データの出典

  • 成約価格データ:国土交通省「不動産取引価格情報」(2008年〜2025年第3四半期)

※ 本記事の相場データはBase-upが上記公的データを独自に集計したものです。実際の成約価格は物件の個別条件により異なります。