法人名義で所有している不動産を売却する場合、税金の計算方法は個人とまったく異なります。個人は「譲渡所得」として分離課税されますが、法人は他の事業所得と合算して法人税が課されます。税率や控除の仕組みが異なるため、事前のシミュレーションが欠かせません。

個人売却と法人売却の根本的な違い

個人と法人では、不動産売却益に対する課税の仕組みが根本的に異なります。

項目個人法人
課税方式申告分離課税法人所得と合算(総合課税)
税率20.315%(長期)/ 39.63%(短期)実効税率 約30〜34%
所有期間による税率差あり(5年超/以下)なし
3,000万円特別控除あり(居住用)なし
損益通算原則不可(分離課税)他の事業損益と通算可
減価償却任意(非事業用は強制)強制

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個人の場合は長期譲渡なら20.315%の固定税率ですが、法人は他の事業損益と合算されるため、赤字の事業がある場合は法人のほうが有利になることもあります。

法人税の計算の仕組み

法人が不動産を売却した場合、売却益は以下の計算で「譲渡益」として法人所得に含まれます。

譲渡益 = 売却価格 −(帳簿価額 + 譲渡費用)

ここでいう帳簿価額は、取得価格から減価償却累計額を差し引いた金額です。法人は減価償却が強制適用されるため、長期間所有した建物の帳簿価額は大幅に下がっていることが多く、結果として譲渡益が大きくなりがちです。

帳簿価額の確認方法

帳簿価額は固定資産台帳や決算書の「有形固定資産」欄で確認できます。顧問税理士に正確な金額を確認しましょう。

法人税の実効税率

法人税の実効税率は、法人税・地方法人税・事業税・住民税を合算した税率です。

詳しくは「売却と住民税の関係」をご覧ください。

課税所得実効税率(概算)
400万円以下約22%
400万円超 800万円以下約25%
800万円超約34%(資本金1億円以下の中小法人)

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個人の長期譲渡所得税率20.315%と比較すると、法人のほうが税率が高くなるケースが多いです。ただし、法人に繰越欠損金がある場合は課税所得が圧縮されるため、実質的な税負担が軽くなることもあります。

低額譲渡に注意 — 時価との乖離はリスク

法人が時価よりも著しく低い価格で不動産を売却すると、時価との差額が「寄附金」として認定される可能性があります。

特に関連会社間取引や、法人から役員・親族への売却では税務署が厳しくチェックします。時価の算定は不動産鑑定士による鑑定評価を取得するのが最も安全です。

時価とは

税法上の「時価」は、不特定多数の第三者間で成立する取引価格を指します。路線価や固定資産税評価額ではなく、実勢価格が基準となります。

詳しくは「路線価の読み方」をご覧ください。

役員への売却は「役員賞与認定」のリスク

法人が所有する不動産を役員に時価より安く売却した場合、時価との差額が「役員賞与」として認定される可能性があります。

役員賞与は法人側で損金不算入(経費にならない)、役員個人側で所得税が課税されるという二重課税のリスクがあります。

逆に、役員から法人に時価より安く売却した場合は、法人側に「受贈益」が発生し、法人税の課税対象になります。

法人を清算して売却する場合

不動産以外に事業がない法人(資産管理会社等)の場合、法人を清算して不動産を売却するケースもあります。

清算する場合の流れは、不動産を売却して債務を弁済し、残余財産を株主に分配します。残余財産の分配は「みなし配当」として株主に所得税が課税されるため、法人税と合わせた総合的な税負担を比較する必要があります。

個人名義に移してから売却するか、法人のまま売却するか、法人を清算するかは、税理士と十分にシミュレーションしたうえで判断しましょう。

よくある質問

Q. 法人の不動産売却でも仲介手数料の計算は同じですか?

はい。仲介手数料の上限は個人・法人を問わず同じ計算式(売買価格×3%+6万円+消費税)です。

詳しくは「仲介手数料の計算方法」をご覧ください。

Q. 法人の不動産売却に消費税はかかりますか?

建物部分には消費税がかかります(課税事業者の場合)。土地は非課税です。

Q. 法人から個人(役員)に名義変更してから売却したほうが有利ですか?

ケースバイケースです。名義変更時に時価課税が発生するため、二段階の取引による総合的な税負担を比較する必要があります。必ず税理士に相談してください。

Q. 法人が不動産を売却した場合、確定申告の時期は?

法人の場合は事業年度末日の翌日から2か月以内に法人税の確定申告を行います。個人の確定申告時期(2〜3月)とは異なります。

詳しくは「不動産売却後の確定申告」をご覧ください。

「法人名義の不動産売却は個人よりも税務が複雑です。Base-upでは顧問税理士との連携もサポートし、税務面のリスクを事前に整理したうえで売却計画をご提案しています。」

Base-up 久保 塁