不動産を売ろうと思ったとき、最初に気になるのは「自分の物件はいくらで売れるのか」ではないでしょうか。
不動産会社に査定を依頼する前に、自分である程度の相場を把握しておくことには大きなメリットがあります。査定額の妥当性を自分で判断できるからです。相場を知らないまま複数社の査定額を比べても、どの数字が現実的なのかがわかりません。結果的に「一番高い額を出した会社」に飛びつき、なかなか売れないという失敗パターンに陥りがちです。
このページでは、誰でも無料で使える6つの情報源と、それぞれの「見方」「使い方」「注意点」を整理します。
なぜ自分で相場を調べるべきか
不動産会社に査定を頼めば数字は出してもらえます。それでもわざわざ自分で調べる意味は、大きく3つあります。
1つ目は、「高すぎる査定額」に気づけること。一括査定サイトなどを使うと、媒介契約を取りたい会社が相場より高い額を提示することがあります。相場感がなければ「一番高く売ってくれそう」と錯覚してしまいますが、相場を知っていれば「この数字は現実的ではない」と冷静に判断できます。
2つ目は、「安すぎる買取価格」を見破れること。買取を提案された場合、その価格が市場相場の何割なのかを自分で確認できます。
3つ目は、不動産会社との打ち合わせの質が上がること。「このエリアの取引事例を見ましたが、うちの物件だともう少し高くなりませんか?」といった具体的な会話ができるようになります。
「相場」は1つの数字ではない
不動産の相場は、同じエリア・同じ面積でも、築年数・階数・方角・管理状態・前面道路の幅などによって大きく変わります。「このあたりは坪○○万円」という言い方はあくまで目安であり、あなたの物件がいくらで売れるかは、個別に判断する必要があります。相場調査はその判断の「材料」を集める作業だと考えてください。
① 国土交通省「不動産取引価格情報」
おすすめ度:★★★★★|無料・一般公開
6つの中で最も実用的で、最初に見るべき情報源です。国土交通省が実際の売買当事者にアンケートを行い、取引価格を集計・公開しています。
使い方
国土交通省の「不動産取引価格情報検索」サイト(土地総合情報システム)にアクセスし、地域・物件種別・取引時期を指定するだけで、過去の取引事例を一覧で確認できます。マンション・一戸建て・土地いずれも対象です。
わかること
所在地(町丁目レベル)、取引価格、面積、築年数、坪単価(㎡単価)、取引時期、用途地域、前面道路の幅員・種類などが確認できます。
注意点
マンション名は表示されません。「○○区○○、3LDK、築15年、70㎡」のように属性だけが出るため、自分のマンションの事例かどうかは推測で判断する必要があります。また、アンケートベースのため回収率は約3割程度で、すべての取引が載っているわけではありません。データ公開にも半年ほどのタイムラグがあります。
「取引価格」と「売り出し価格」は別物
この情報で見られるのは実際に成約した価格です。SUUMOなどのポータルサイトで表示される売り出し価格とは異なります。売り出し価格は値引き交渉前の「希望価格」ですから、実際の売買価格より高めに出ているのが普通です。相場を正しく把握するには、この取引価格情報のほうが信頼性が高いといえます。
② 公示地価・基準地価
おすすめ度:★★★★☆|無料・一般公開
公示地価は国土交通省が毎年1月1日時点の土地の標準的な価格を公表するもので、3月下旬に発表されます。基準地価は都道府県が7月1日時点で調査し、9月下旬に公表します。
使い方
国土交通省「地価公示・地価調査」検索サイトで、住所や地図から調べたいエリアの地価を確認できます。福岡市では約700地点が設定されており、自分の物件の近くの標準地・基準地を探して参考にできます。
わかること
調査地点の1㎡あたりの価格と、前年からの変動率がわかります。「このエリアの地価は上がっているのか、下がっているのか」という傾向を掴むのに役立ちます。
注意点
公示地価は「更地としての評価」です。建物の価値は含まれていません。またあくまで「標準的な土地」の評価なので、間口が狭い・日当たりが悪い・道路付けが悪いなどの個別事情は反映されません。マンションの相場を調べる目的にはやや不向きです。
③ 路線価(国税庁)
おすすめ度:★★★☆☆|無料・一般公開
路線価は国税庁が毎年7月に公表する、道路に面した土地の1㎡あたりの評価額です。主に相続税・贈与税の計算に使われます。
使い方
国税庁の「路線価図・評価倍率表」サイトで、地図上の道路ごとに設定された価格(千円単位)を確認できます。自分の土地が面している道路の路線価を読み取ります。
わかること
路線価は公示地価の約80%が目安とされています。つまり、路線価を0.8で割ると、公示地価の水準(≒ 実勢価格の目安)がざっくりわかります。
たとえば路線価が20万円/㎡であれば、20万÷0.8=25万円/㎡が公示地価の水準です。
注意点
路線価はあくまで税金計算用の評価額であり、実際の売買価格とは直接イコールではありません。また、路線価÷0.8で出る数字は目安にすぎず、人気エリアでは実勢価格が公示地価を大きく上回ることもあります(福岡市中央区の一部では1.2〜1.5倍になる地点もあります)。
④ 固定資産税評価額
おすすめ度:★★★☆☆|手元の納税通知書で確認
固定資産税評価額は、市区町村が3年に1度の評価替えで決定する不動産の評価額です。毎年届く固定資産税の納税通知書に記載されています。
わかること
固定資産税評価額は公示地価の約70%が目安です。つまり、評価額を0.7で割ると、公示地価の水準がざっくりわかります。
建物についても評価額が出ているため、土地と建物を分けて把握できるのがメリットです。マンションの場合は「土地(持分)+建物」の合計が記載されています。
注意点
固定資産税評価額は3年に1度しか更新されないため、急激に相場が動いている時期には実態とズレが出ます。また、建物の評価額は「再建築コスト」ベースの計算であり、市場で実際にいくらで売れるかとは異なります。
⑤ レインズ・マーケット・インフォメーション
おすすめ度:★★★★☆|無料・一般公開(成約情報のみ)
レインズは不動産会社だけが見られる物件データベースですが、その成約価格の一部は「レインズ・マーケット・インフォメーション」として一般にも公開されています。
使い方
レインズ・マーケット・インフォメーションのサイトにアクセスし、地域・沿線・駅・物件種別(マンション・一戸建て)を選ぶと、直近1年の成約価格がグラフと一覧で確認できます。
わかること
成約価格(実際に売買が成立した価格)、専有面積、築年数、最寄り駅からの距離、成約時期がわかります。国土交通省の取引価格情報と似ていますが、こちらは不動産会社が報告した成約データがベースなので、若干異なるデータが見つかることもあります。
注意点
物件の特定を防ぐため、価格は100万円単位に丸められ、面積も5㎡刻みで表示されます。また、土地のデータは公開されていません(マンション・一戸建てのみ)。
⑥ 不動産ポータルサイト(SUUMO・HOME'Sなど)
おすすめ度:★★★☆☆|無料
SUUMO、HOME'S(LIFULL HOME'S)、at homeなどの不動産ポータルサイトでは、現在売り出し中の物件を検索できます。「今、同じエリアでどんな物件がいくらで出ているか」を確認するのに便利です。
使い方
エリア・物件種別・面積・築年数などを絞り込んで検索するだけです。自分の物件と似た条件の物件がいくらで売り出されているかを見ます。
わかること
売り出し中の物件の価格、間取り、築年数、面積、駅からの距離、写真などが確認できます。マンション名も出るため、同じマンション内の売り出し事例があれば非常に参考になります。
注意点
ポータルサイトに載っているのはあくまで「売り出し価格」であって「成約価格」ではないという点に注意が必要です。売り出し価格のまま売れるとは限りません。実際には5〜10%の値引き交渉が入ることも多いため、ポータルサイトの価格はやや高めに見えます。
また、長期間売れ残っている物件は「相場より高い」可能性が高いため、掲載日もあわせて確認しましょう。
6つの情報源を比較する
成約価格がわかるのは①取引価格情報と⑤レインズMI。公的な土地評価がわかるのは②公示地価と③路線価と④固定資産税評価額。今の売り出し状況がわかるのは⑥ポータルサイト。おすすめは、まず①で過去の成約事例を確認し、⑥で現在の競合物件を見る、という組み合わせです。
福岡市の相場を調べるなら
上記の6つに加えて、福岡市に特化した相場情報として、私たちBase-upが運営する「福岡市不動産相場マップ」があります。
国土交通省の取引価格情報をもとに、福岡市7区の「字(あざ)」単位で中央値を算出し、マップ上に色分け表示しています。マンション・一戸建て・土地それぞれの相場を視覚的に確認でき、年度別の推移も見られます。
「自分のエリアが福岡市全体の中でどのくらいの位置にあるのか」を直感的に把握できるため、上記6つの情報源と組み合わせて使うと、より精度の高い相場感が得られます。
調べた相場をどう活かすか
情報を集めたら、次のステップに活かしましょう。
査定を受ける前に
複数の情報源から得た数字をノートにまとめておきましょう。たとえば「取引価格情報で同じ町丁目のマンションが3,000万〜3,500万円で成約」「SUUMOで同じマンションの別の部屋が3,680万円で売り出し中」「路線価から逆算した土地持分の目安は○○万円」——このように整理しておくと、査定を受けたときに提示された数字が妥当かどうかを冷静に判断できます。
査定額を比較するとき
複数社の査定を受けると、会社ごとに数百万円の差が出ることは珍しくありません。このとき、自分で調べた相場感があれば、「高すぎる査定額」に引っ張られない判断ができます。「査定額と成約価格のギャップの真実」でも解説していますが、高い査定額は必ずしも高く売れることを意味しません。
売り出し価格を決めるとき
最終的に売り出し価格を決めるのは売主自身です。相場を知っていれば、不動産会社から提案された価格に対して「もう少し攻めてもいいのでは」「ここは欲張らないほうがいい」といった判断を、根拠を持って行えます。
相場調べはあくまで「目安」
ここまで6つの情報源を紹介しましたが、自分で調べた数字だけで売却価格を決めるのはおすすめしません。不動産は1つとして同じ物件がないため、最終的には現地を見たうえでのプロの判断が不可欠です。相場調査は「査定を正しく受け止めるための準備」と位置づけてください。
よくある質問
Q. 相場調べにどのくらい時間がかかりますか?
1時間もあれば十分です。まず国土交通省の取引価格情報で過去の成約事例を確認し(15分)、SUUMOで現在の売り出し物件を見て(15分)、固定資産税の通知書で自分の評価額を確認する(5分)。この3つだけでも、かなり精度の高い相場感が得られます。
Q. マンションの相場はどうやって調べればいいですか?
マンションの場合は、同じマンション内の過去の成約事例が最も参考になります。取引価格情報やレインズMIで同じ町丁目・同じ築年数・同じ面積帯の事例を探し、SUUMOで同じマンション名の売り出し中の部屋がないか確認しましょう。同じマンション内の事例がなければ、近隣の類似物件(築年数±5年、面積±10㎡)で比較します。
Q. 土地だけの相場はどうやって調べればいいですか?
土地の場合は、取引価格情報で近隣の成約事例を確認するのが基本です。あわせて公示地価と路線価で公的な評価額を確認し、3つの数字を照らし合わせましょう。ただし、土地は形状・接道・用途地域によって価格差が大きいため、面積あたりの単価で比較するだけでは不十分な場合があります。
Q. 相場を調べてから査定を依頼するべきですか?
はい、先に調べてから査定を受けることをおすすめします。査定は無料ですが、相場を知らないまま受けると、提示された数字を鵜呑みにしやすくなります。自分なりの相場感を持ったうえで「この数字の根拠は?」と聞ける状態が理想的です。
Q. AI査定・ネット査定は信用できますか?
近年増えている「AI査定」「ネット査定」は、過去の取引データをもとに機械的に算出するものです。参考にはなりますが、物件の個別事情(リフォーム歴・管理状態・日当たり・周辺環境など)が反映されないため、精度には限界があります。あくまで「ざっくりした目安」として使い、最終的には不動産会社の訪問査定を受けることをおすすめします。
「相場を自分で調べた方は、査定の打ち合わせがとてもスムーズです。根拠のある質問をいただけるので、こちらも正直にお答えしやすい。調べることに時間をかけて損はありません」
Base-up 久保 塁