地価が上がっていても、あなたの家がその分高く売れるとは限りません。

これが、この記事で最初に伝えたいことです。2025年の地価公示で福岡市は12年連続上昇を記録しました。ニュースでは「地価が上がっている」と報じられますが、地価公示はあくまで「標準地の平均値」であって、あなたの物件の売却価格ではありません。

この記事では、地価データを「自分の物件はどうなのか」という売却判断に変換するためのポイントを整理します。

地価データで売主が誤解しやすい3つのこと

❶「地価が上がった=自分の物件も上がった」ではない。地価公示は標準地の話であり、あなたの物件の築年数・管理状態・間取りは反映されていません。
❷「鈍化=下落」ではない。上昇率が5%→4%になっても、価格自体は上がっています。ニュースの印象に引きずられないでください。
❸「まだ上がるから待つ」は判断ではなく願望。金利上昇、人口動態の変化、オフィス供給過剰——下振れリスクは常に存在します。

地価が上がった今、売るべき人 / 急がなくていい人

今動いた方がいい人

購入時より含み益が出ているマンションオーナー。特に中央区・博多区の築10〜20年は、ここ5年で㎡単価が20〜30%上がっています。この含み益は「確定しなければ幻」です。金利上昇局面では買い手の予算が縮小し、現在の価格水準が維持される保証はありません。

住み替え・相続で「いつかは売る」と決まっている人。「いつか」が決まっているなら、市場環境が良い今動くのが合理的。時間が経つほど建物の減価が進み、手取りは減ります。

収益物件のオーナーで、出口を検討している人。福岡市の利回りは東京より高く、県外投資家の買い意欲が旺盛な今は売り手に有利な環境です。

急がなくていい人

ローン残債がなく、今の住まいに不満がない人。売る理由がないなら、慌てる必要はありません。「上がっているうちに売らなきゃ」は不動産会社の営業トークです。

相続した物件で、維持コストが許容範囲の人。固定資産税と管理費が負担でなければ、市場を見ながらタイミングを計る余裕があります。ただし空き家の場合、放置による劣化コストは計算に入れてください。

新聞の不動産面

福岡市全体の動向 — 12年連続上昇

2025年 福岡市の住宅地 平均変動率

+5.8%

全国の政令指定都市で3位の上昇率

2025年の地価公示によると、福岡市の住宅地の平均変動率は前年比+5.8%。商業地は+8.2%でした。住宅地・商業地ともに二桁上昇に近い高水準が続いています。

区分 平均変動率 全国順位
住宅地 +5.8% 政令市3位
商業地 +8.2% 政令市2位

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ただし、上昇率は2023年をピーク(住宅地+7.1%)にやや鈍化の傾向が見られます。「まだ上がっているが、上がり方はゆるやかになってきている」というのが正確な読み方です。

過去5年間の推移

福岡市全体の住宅地・商業地の平均変動率の推移を見てみましょう。

住宅地 商業地 備考
2021年 +3.2% +4.5% コロナ影響からの回復
2022年 +5.4% +6.8% 天神ビッグバン効果が顕在化
2023年 +7.1% +9.5% 直近5年のピーク
2024年 +6.3% +8.9% 上昇率やや鈍化
2025年 +5.8% +8.2% 依然として高水準を維持

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「鈍化」は「下落」ではない

上昇率が鈍化しているからといって、地価が下がっているわけではありません。5.8%の上昇は依然として全国的に高い水準です。「上がるペースがやや落ち着いてきた」という読み方が正確です。

7区別の地価と変動率

福岡市は7つの区で構成されていますが、地価の水準も上昇率も区によって大きく異なります。

住宅地平均(㎡単価) 変動率 商業地変動率
中央区 32.8万円 +7.2% +10.1%
博多区 24.1万円 +6.5% +9.8%
早良区 18.6万円 +5.9% +7.4%
南区 15.2万円 +5.3% +6.8%
城南区 16.8万円 +5.1% +6.2%
西区 12.4万円 +6.1% +7.0%
東区 13.5万円 +4.8% +6.5%

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※数値は2025年地価公示に基づく概算値です。最新の正式な数値は国土交通省「地価公示」をご確認ください。

ここからは、各区の特徴を個別に見ていきます。

中央区 +7.2%

住宅地平均㎡単価

32.8万円

前年比

+7.2%

7区中もっとも地価が高く、上昇率もトップ。天神ビッグバンによる商業地の再開発効果が住宅地にも波及しています。特に薬院・平尾・大濠エリアは富裕層の需要が根強く、マンション価格は高止まりの状態。一方で、供給過多の兆しも見られ始めており、築浅の競合物件が増える今後は売却タイミングの見極めが重要になります。

博多区 +6.5%

住宅地平均㎡単価

24.1万円

前年比

+6.5%

博多コネクティッドの進行に伴い、博多駅周辺の商業地は二桁に迫る上昇率。住宅地も投資需要を背景に堅調です。博多駅南・美野島エリアでは収益物件の取引が活発。ただし住宅地に限れば、駅から離れたエリアでは上昇率の格差が大きくなっています。

早良区 +5.9%

住宅地平均㎡単価

18.6万円

前年比

+5.9%

西新・藤崎エリアは地下鉄空港線沿線の利便性から根強い人気があり、ファミリー向けマンションの需要が安定しています。百道浜エリアは文教地区としてのブランド力で高値を維持。一方、南部の山間部(早良南部)は上昇率が低く、区内での格差が大きいのが特徴です。

南区 +5.3%

住宅地平均㎡単価

15.2万円

前年比

+5.3%

大橋駅周辺はJR・西鉄の結節点として再評価が進み、商業地の上昇が顕著。住宅地は比較的手頃な価格帯が残っており、中央区・博多区からの住み替え需要の受け皿となっています。一戸建て・土地の取引が多いエリアで、ファミリー世帯に人気です。

城南区 +5.1%

住宅地平均㎡単価

16.8万円

前年比

+5.1%

七隈線の延伸(天神南〜博多間開通)の恩恵を受けて、別府・七隈エリアが上昇。福大周辺は学生向け賃貸需要が安定しており、収益物件の投資エリアとしても注目されています。面積に対して比較的手頃な一戸建てが見つかるエリアです。

西区 +6.1%

住宅地平均㎡単価

12.4万円

前年比

+6.1%

㎡単価は7区中もっとも低いものの、上昇率は中央区・博多区に次ぐ水準。姪浜エリアは地下鉄始発駅の利便性が再評価され、九大学研都市エリアは新興住宅地として開発が進行中。土地の取引量が多く、これから家を建てる若年ファミリー層の需要を集めています。

東区 +4.8%

住宅地平均㎡単価

13.5万円

前年比

+4.8%

福岡市最大の人口を擁する東区。千早・香椎エリアは再開発の進行で上昇率が高く、特に千早駅周辺のマンション需要が堅調です。一方、和白・志賀島方面は上昇が緩やかで、区内での二極化が進んでいます。広い土地を比較的手頃に購入できるため、建売住宅の供給量が多いのも特徴です。

Consultation

地価データだけでは
わからないこと

地価公示は「エリアの平均値」です。あなたの物件がいくらで売れるかは、立地・築年数・間取り・競合物件で決まります。
マクロの数字を、個別の売却判断に変えるのがBase-upの査定です。

自分の物件の価値を確認する相場を知りたい・売却検討中の方

上昇の背景にある3つの要因

福岡市の地価がこれほど長期間にわたって上昇し続けている背景には、3つの構造的な要因があります。

要因① 人口増加 — 政令市で唯一の「転入超過」

福岡市の人口は約164万人(2025年1月時点)で、20大政令指定都市のなかで唯一、転入超過が続いている都市です。特に20〜30代の若年層の流入が目立ち、住宅需要を下支えしています。人口が増えれば住む場所が必要になり、それが地価の上昇に直結します。

要因② 天神ビッグバン・博多コネクティッド

天神ビッグバン(2015年〜)と博多コネクティッド(2019年〜)という2つの大規模再開発プロジェクトが、福岡市の都市としての魅力と機能を大幅に引き上げています。オフィス面積の拡大、商業施設のリニューアル、ホテルの増加。これらが企業誘致と雇用創出を生み、さらなる人口流入につながるという好循環が形成されています。

要因③ アジアの玄関口としての優位性

福岡空港の都心からのアクセス(地下鉄2駅・約5分)は世界的にも稀有な利便性です。博多港の国際航路と合わせて、アジアとの距離の近さが海外からの投資需要や観光需要を呼び込んでいます。インバウンド回復後、商業地の地価上昇が加速したのはこの要因によるところが大きいです。

上昇は永遠には続かない

上記の好材料がある一方で、金利上昇リスク、マンション供給過多、建築コストの高騰など、地価の上昇を鈍化させる要因も存在します。「まだ上がるから待つべき」と安易に判断するのは危険です。

物件種別ごとの影響

開発計画と街並み

地価の上昇は、すべての物件に同じように影響するわけではありません。種別ごとに見てみましょう。

マンション — 恩恵がもっとも大きい

マンション価格は土地の値上がりに加えて、建築コストの高騰分もダイレクトに反映されます。新築マンションの価格が上がれば、中古マンションの相対的な割安感が増し、中古の価格も引き上げられるという構造です。福岡市の中古マンション平均価格は、2020年比で約25〜30%上昇しています。

一戸建て — 土地部分は上昇、建物は経年で下落

一戸建ての価格は「土地+建物」ですが、建物は経年劣化で価値が下がります。土地部分は地価上昇の恩恵を受けますが、築20年以上の建物部分はほぼゼロ評価になることも。売却益を最大化するには、土地の価値が高い立地かどうかが重要です。

土地 — 地価公示の影響を直接受ける

建物がない分、土地は地価公示の動向がほぼダイレクトに売却価格に反映されます。特に駅近・利便性の高い立地は、住宅用地としての需要が根強く、今後も価格が維持されやすいと考えられます。

収益物件 — 利回りと金利の綱引き

収益物件(投資用)は、地価の上昇で物件価格が上がると表面利回りが低下します。金利上昇局面では投資家の購入意欲が減退する可能性があり、一般住宅ほど単純に「地価上昇=高く売れる」とはなりません。出口戦略としての売却タイミングは、金利動向とセットで検討すべきです。

「じゃあ、いつ売るべきか?」への正直な回答

地価データの分析

地価データを見ると、「まだ上がっているなら、もう少し待った方がいいのでは?」と考える方が多いと思います。

正直にお伝えします。「いつ売るべきか」の正解は、誰にもわかりません。

地価が来年も上がるかどうかは、金利政策・経済動向・人口動態・再開発の進捗・国際情勢など、無数の変数に左右されます。「もう少し待てばもっと高くなる」は、裏返せば「もう少し待ったら下がるかもしれない」です。

「市場のタイミング」よりも「人生のタイミング」

私たちが売主様にお伝えしているのは、売却のタイミングは「市場」ではなく「人生」で決めてくださいということです。

住み替えが必要な時、相続の整理が必要な時、ローンの負担を減らしたい時、転勤が決まった時——。売却を検討する理由は、すべて売主様の人生の事情です。市場の「天井」を当てようとして売却時期を引き延ばすと、その間の維持コスト(固定資産税・管理費・劣化リスク)が積み上がっていきます。

「地価が上がっているから売り時です、とは言いません。でも、あなたの人生にとって今が売り時なら、地価が後押ししてくれる環境であることは事実です。その判断をするための正確な情報を提供するのが、私たちの仕事です」

Base-up 代表 久保

必要なのは「判断するための情報」

地価公示はマクロの指標です。ご自身の物件がいくらで売れそうかは、立地・築年数・間取り・周辺の競合物件など、個別の条件を精査しなければわかりません。

Base-upでは、地価公示データはもちろん、近隣の成約事例・競合物件の状況・エリア特性を踏まえた個別の査定を行っています。「マーケットの全体感は理解したので、自分の物件について知りたい」という方は、ご相談いただけます。

この記事は毎年更新します

地価公示は毎年3月に発表されます。Base-upでは、発表後速やかにこの記事を最新データに更新します。ブックマークしておくと便利です。