このレポートの集計時点:2026年6月
福岡市の中古マンション市場は「成長」から「選別」のフェーズに移行しています。価格は高水準を維持している一方で、金利上昇で買い手の予算は厳しくなっている。つまり、「売れるマンション」と「売れないマンション」の差がはっきりしてきた。
このレポートは市況の解説で終わらせません。データを読んだ上で「あなたのマンションは今動くべきか」を判断するための記事です。
今動くべきマンションオーナー / 急がなくていい人
- 築10〜20年・駅徒歩5分以内のマンション
- 含み益が出ている投資用マンション
- 築25年超で管理費・修繕積立金が月3万円超
- 築5年以内・駅近で含み益がまだ伸びている
- ローン残債が査定額を上回っている
今動いた方がいい
築10〜20年・駅徒歩5分以内のマンションオーナー。このゾーンは今最も流動性が高い。新築が高騰しすぎて中古に流れる買い手の受け皿になっており、需要が厚い。金利がさらに上がれば買い手の予算が縮小するため、今の価格水準は長くは続かない可能性がある。
含み益が出ている投資用マンションのオーナー。福岡市の利回りに魅力を感じる県外投資家が多い今は売り手に有利。出口戦略として検討するなら、買い手の選択肢が多い今がタイミング。
築25年超で管理費・修繕積立金が月3万円を超えるマンション。金利上昇で買い手の「月々の支払い限度額」が下がっている。ランニングコストが高い物件ほど、検索条件から外されやすくなっている。早く動くほど有利。
急がなくていい
築5年以内・駅近で含み益がまだ伸びている物件。新築価格が高い水準にある(2025年の福岡市の新築平均価格は5,305万円)ため、築浅の中古は新築と比べられやすく、価格が支えられている。ただし、金利の動向は常にウォッチしてください。
ローン残債が査定額を上回っている物件。無理に売ると持ち出しになる。返済を続けながら残債が査定額を下回るタイミングを待つ方が合理的。
市場の概況
2025年通年〜2026年初頭の福岡市中古マンション市場を一言で表すなら、「価格は高水準を維持しつつ、買い手の選別が厳しくなっている」という状況です。
平均成約価格や成約件数といった市全体の数値は、集計の方法や期間によって大きく変わります。当社が集計している最新の水準は福岡市の中古マンション売却相場で確認できます。
注目したいのは、価格が高い水準にある一方で、金利上昇によって買い手の借入可能額が縮んでいる点です。「買いたいけど手が届かない」層が増えれば、売り出し価格と買い手の予算のずれが、成約までの期間の長さとして表れやすくなります。
データについて
本記事は市況の傾向を解説したもので、市全体の平均成約価格などの集計値は掲載していません。最新の売出データは福岡市の中古マンション売却相場で確認できます。個別のマンションの価格は立地・階数・向き・管理状態等によって大きく異なります。
価格動向 — 中古マンション成約価格の推移
福岡市の中古マンション成約価格は、2020年以降一貫して上昇しています。
土地の価格も同じ方向です。福岡市の住宅地の地価公示(区別平均の全市)は2013年から14年連続で上昇しており、上昇率は2024年+9.6%、2025年+9.0%、2026年+7.0%でした。上昇は続いていますが、伸び率は2024年をピークに鈍っています。中古マンションの最新の価格水準は福岡市の中古マンション売却相場で確認できます。
新築マンションとの関係
福岡市の新築マンション平均価格は2025年に5,305万円(不動産経済研究所)と5,000万円を超え、一般的な共働き世帯でも手が届きにくい水準に達しています。この「新築の高騰」が中古マンション市場への追い風になっています。新築を断念した層が中古に流れるため、中古の需要は底堅い状態が続いています。
区別動向 — 7区それぞれの温度感
福岡市は7つの行政区から成りますが、マンション市場の状況は区によって大きく異なります。
| 区 | 特徴 |
|---|---|
| 中央区 | 天神・大濠・浄水など。市内最高水準。高額帯も堅調 |
| 博多区 | 博多駅周辺の再開発効果。投資需要も根強い |
| 東区 | 千早再開発エリアが牽引。香椎・照葉も安定 |
| 早良区 | 百道浜・西新が高額帯。校区人気が価格を支える |
| 南区 | 大橋駅周辺は堅調。駅から離れたエリアは物件ごとの差が大きい |
| 城南区 | 七隈線沿線が中心。手頃な価格帯が中心 |
| 西区 | 姪浜・橋本・九大学研都市など、エリアで性格が異なる |
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区ごとの最新の水準は、中央区・博多区・東区・早良区・南区・城南区・西区のマンション売却相場で確認できます。
「二極化」が進行中
区単位で見ると、2026年の住宅地の地価公示の上昇率は西区+7.9%、博多区+7.6%、中央区+6.7%などで、郊外の区だけが都心より伸びが小さいわけではありません。差が出やすいのは同じ区の中の立地です。駅徒歩圏のマンションとバス便のみのマンションでは、同じ築年数でも㎡単価に大きな差がつくことがあります。お持ちのマンションの「エリア内での立ち位置」を把握することが重要です。
築年数別の動向
中古マンションの価格は築年数によって大きく異なります。築年数別の成約の状況を見てみましょう。
| 築年数 | 成約の状況 |
|---|---|
| 築5年以内 | 新築に近い品質で需要旺盛。売り出しから短期間で成約することも |
| 築6〜10年 | 設備も新しく人気が高い |
| 築11〜15年 | 大規模修繕が近い物件は修繕積立金の状況がポイント |
| 築16〜20年 | 設備の古さが目立ち始める。水回りの状態が価格に影響 |
| 築21〜25年 | 管理状態が鍵。1982年以降に建築された住宅は新耐震基準に適合するものとして扱われ、築年数だけで買主の住宅ローン控除の対象外になることはない |
| 築26〜30年 | 大規模修繕の実施状況や設備更新の有無が価格に影響 |
| 築31年以上 | 立地が良ければ需要あり。管理の良し悪しが決定的。旧耐震(1981年5月以前に建築確認)の物件はローン審査で不利になりやすい |
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築年数が進むほど「管理状態」「修繕積立金の状況」「耐震性能」が価格に大きく影響するようになります。
このデータから言えること
築10〜15年がベストタイミング。設備がまだ新しく、買い手の選択肢に入りやすい。含み益があるなら、大規模修繕や設備更新の時期と合わせて売り時を検討したい。
築25年超は「管理の良さ」が最大の武器。修繕積立金の残高、大規模修繕の実施状況、共用部の清掃状態——これが価格を大きく左右します。築古でもこの3点が優れていれば、同じ築年数の相場を上回る価格で成約することもあります。
旧耐震(1981年5月以前に建築確認)の物件は「時間との戦い」。住宅ローン審査が通りにくくなるため、現金買いの投資家が主な買い手。この層は価格にシビアなので、高値は期待できません。
買い手の動向
「誰がマンションを買っているか」を理解することは、売却戦略を考えるうえで重要です。
実需層(自分で住む方)
福岡市の中古マンション購入者の中心は実需層です。30〜40代の共働き世帯が中心で、新築が高くなりすぎたために中古に流れてきた層が多いのが特徴です。この層は駅徒歩10分以内・築15年以内・3LDKを中心に探しており、条件に合う物件は比較的早く成約します。
金利上昇の影響
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的な利上げを実施しています。これにより実需層の借入可能額は縮小しています。35年返済・元利均等で試算すると、金利が1%上がると同じ返済額で借りられる金額はおよそ15%(借入3,000万円なら約450万円)減ります。その結果、予算の上限が下がり、高価格帯の物件ほど成約に時間がかかりやすくなります。
投資家層
博多区・中央区を中心に、ワンルーム〜1LDKの投資用マンションの需要も一定数あります。ただし、金利上昇で投資利回りの目線が厳しくなっており、以前ほどの過熱感はなくなっています。
県外・海外からの購入者
東京や大阪と比較した割安感から、県外からの購入も増えています。特に中央区・博多区の好立地物件には、東京在住の投資家やセカンドハウス需要が見られます。
今後の見通し
2026年にかけて、福岡市の中古マンション市場はどう動くか。確実なことは誰にも言えませんが、現時点で見えている材料を整理します。
価格を支える要因(上昇・維持方向)
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 人口増加の継続 | 福岡市は年間約1万人のペースで人口が増加。住宅需要の底支え |
| 新築価格の高止まり | 建築コスト上昇で新築は下がりにくい。中古への需要シフトが続く |
| 再開発効果 | 天神ビッグバン・博多コネクティッドによる都市機能向上が周辺地価を押し上げ |
| 半導体関連需要 | TSMC熊本工場(熊本県菊陽町)を中心とした九州の半導体関連投資。福岡への波及は今後の注目点 |
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価格を下押しする要因(下落方向)
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 金利上昇 | 買い手の購買力低下。特に高価格帯の物件に影響 |
| 新築との競合 | 福岡市の新築供給は2025年に2,212戸(前年比13.7%減)と減少しているが、大型物件の販売が重なる地区では中古と競合する |
| 相続増加 | 団塊世代の高齢化により、相続マンションの売り出しが増加傾向 |
| 修繕積立金の値上げ | 築古マンションの修繕積立金値上げが買い手心理に影響 |
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- 人口増加の継続
- 新築価格の高止まり
- 再開発効果
- 半導体関連需要
- 金利上昇
- 新築との競合
- 相続による売り出し増
- 修繕積立金の値上げ
ただし高すぎる売り出し価格は売れ残りやすい。
Base-upの見方
上昇要因と下押し要因が拮抗しており、2026年は「緩やかな上昇」または「横ばい」が最も可能性の高いシナリオと考えています。ただし、急落リスクは低い一方で、「売り出し価格が高すぎると売れ残る」リスクは確実に高まっています。適正価格での売り出しがこれまで以上に重要です。
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現在の市場環境を踏まえ、マンション売却を検討している方にお伝えしたいことが4つあります。
① 高値追求より「適正価格」を
市場が「選別」のフェーズに入った今、高値設定で売り出して長期間売れ残るリスクが高まっています。近隣の直近の成約事例に基づいた、現実的な価格設定が成約の鍵です。
すでに売り出しているのに反応が鈍い方は、マンションが売れないときの原因の整理も参考にしてください。
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② お持ちのマンションの「強み」を把握する
同じ築年数・同じ広さでも、駅距離、階数、向き、管理状態、眺望によって価格は大きく変わります。「一般的な相場」ではなく、お持ちのマンション固有の強みと弱みを正確に把握することが、適切な売却戦略の出発点です。
③ 管理状態をアピール材料にする
築年数が経つほど、「管理の良し悪し」が価格に影響します。管理組合がしっかり機能している、修繕積立金が計画的に積み立てられている、大規模修繕が実施済みである——。こうした情報は、買い手にとって大きな安心材料になります。
④ 情報が揃っているうちに査定を受ける
売却するかどうかはさておき、今の市場でいくらの価値があるかを知っておくことには意味があります。市場環境は常に変化しており、半年後・1年後に同じ価格で売れる保証はありません。
「福岡のマンション市場は、まだ底堅い需要があります。ただし、数年前のように『出せば売れる』という状況ではなくなりました。大切なのは、お持ちのマンションの市場価値を正確に把握し、適正な価格で売り出すこと。私たちは成約事例のデータに基づいた、根拠のある査定をお出しします」
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データの出典
- 新築マンション価格・供給戸数:不動産経済研究所「全国 新築分譲マンション市場動向 2025年」
- 地価データ:福岡市「令和8年地価公示(福岡市分)」
※ 個別の取引を保証するものではありません。中古マンションの最新の売出データは福岡市の中古マンション売却相場ページで確認できます。
