このレポートは定期的に更新しています

福岡市の一戸建て市場はマンションとは全く異なる動きをしています。土地価格の上昇が成約価格を押し上げる一方、建物の経年劣化が価格を押し下げる。この「土地と建物のせめぎ合い」が一戸建て市場を複雑にしています。

マンション版のレポートはすでに公開していますが、一戸建ては査定のロジックも市場構造も別物。一戸建てオーナーが今判断するために必要なデータを、このレポートに集約しました。

今動くべき一戸建てオーナー / 急がなくていい人

今動いた方がいい

築25年超で、住む予定がない一戸建てのオーナー。建物の資産価値はほぼゼロに近づいている一方、福岡市内の土地価格は上昇中。建物の劣化が進むと解体費用がかさみ、さらに特定空き家に指定されれば固定資産税が最大6倍に。土地値が高いうちに売却するのが最も合理的。

相続で取得した実家を持っているが、管理ができていない方。遠方からの管理は現実的に困難。雑草・屋根・配管の劣化が進むほど、売却時のマイナス要因が増えます。

駅徒歩10分以内・50坪以上の整形地に建つ一戸建て。建物より「土地」に価値がある物件。特に東区・南区・西区の住宅地は、建売業者や注文住宅のための用地需要が旺盛。好条件の土地は複数の業者が競合するため、高値で売却できる可能性があります。

急がなくていい

築10年以内で現在居住中の方。建物の残存価値がまだ大きく、市場環境も悪くない。ライフプランに変化がなければ、慌てる必要はありません。

立地条件が良く、かつリフォーム済みの物件。一戸建てのリフォーム済み物件は市場で希少。焦って安く売るより、じっくり買い手を待つ方が有利なケースも。

新聞の不動産面

市場の概況

2025年の福岡市中古一戸建て市場の状況を数字で確認します。

中古一戸建て 平均掲載価格

4,340万円

前年比 +10.8%

平均坪単価(土地)

78万円/坪

前年比 +5.2%

平均成約日数

105

前年比 +8日

在庫(売出中物件数)

増加傾向

前年比 +12%

注目すべきは、掲載価格の上昇率(+10.8%)と成約日数の長期化が同時に進んでいること。これは「売り出し価格が市場の実勢より高い物件が増えている」ことを示唆しています。

つまり、「高く出しているけど、なかなか売れない」物件が増えている。掲載価格の上昇=市場価格の上昇とは限りません。実際の成約価格は掲載価格より平均で8〜12%低い水準で着地しています。

「掲載価格」と「成約価格」の違いに注意

不動産ポータルサイトに表示されている価格は「売主が希望する価格(掲載価格)」であり、「実際に売れた価格(成約価格)」ではありません。一戸建ては特にこの乖離が大きく、掲載価格だけを見て「うちもこのくらいで売れるはず」と思うのは危険です。Base-upでは成約事例に基づいた査定をお出ししています。

マンションとの違い——なぜ一戸建ては「別物」なのか

一戸建ての売却は、マンションとは根本的に異なります。その違いを理解しないと、価格判断を誤ります。

項目マンション一戸建て
価格の決まり方㎡単価×面積(比較的画一的)土地値+建物残存価値(個別性が極めて高い)
築年数の影響築30年でも価格がつく築20〜25年で建物価値はほぼゼロ
比較の難しさ同じマンション内に事例がある全く同じ条件の物件は存在しない
買い手の層実需+投資家ほぼ実需のみ(ファミリー中心)
成約までの期間平均78日平均105日
価格交渉5〜8%程度の値引き8〜15%程度の値引き

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最も重要な違いは「個別性の高さ」です。マンションは同じ棟内で比較ができますが、一戸建ては土地の形状、接道条件、日当たり、境界の状況、建物の状態が1軒ごとに全く異なる。だから一戸建ての査定は、必ず現地を見なければ意味がないのです。

区別動向——売れやすいエリア・時間がかかるエリア

動向一戸建て市場の特徴
東区活況千早・香椎・照葉エリアの住宅地需要が強い。建売用地として業者の引き合いも多く、土地としての売却がスムーズ
南区堅調大橋・井尻の住宅地はファミリー需要が安定。比較的広い土地(50坪以上)は建売分割用地としても人気
西区堅調姪浜・橋本の駅近はマンション並みに動く。九大学研都市周辺は新築との競合が課題
早良区二極化百道・西新は高額帯でも動く。内陸部(内野・脇山方面)はバスエリアのため成約に時間がかかる
城南区横ばい住宅地として成熟。新規開発は少ないが、既存住宅の建替え需要は底堅い
中央区高値一戸建て自体が希少。土地として取引されるケースが多い。坪単価は市内最高値
博多区限定的一戸建ての流通量が少ない。商業地・準工業地域が多く、住宅地としての需要はエリア限定

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売れやすいのは「駅徒歩圏の住宅地」、時間がかかるのは「バスエリアの築古物件」。この傾向はマンション以上に顕著です。一戸建ての買い手はファミリー層が中心で、通勤・通学の利便性を最重視するからです。

Consultation

あなたの一戸建て、
今の市場でどう評価される?

一戸建ては現地を見なければ正確な査定ができません。
Base-upでは必ず現地調査を行います。

一戸建ての査定を依頼する相場を知りたい・売却検討中の方

築年数と価格の関係——「建物ゼロ」でも売れる理由

一戸建ての価格は、築年数によって劇的に変わります。マンションとの最大の違いは、建物の価値が早く減る代わりに、土地の価値が残ること。

築年数建物の残存価値市場での評価
築5年以内70〜85%新築に近い評価。設備の劣化がなく、買い手にとって「ほぼ新築を割安で買える」メリット
築10〜15年40〜60%設備のリフォーム時期。水回りの状態が価格を大きく左右する
築20〜25年10〜25%建物の評価は大幅に低下。「土地値+α」の価格帯。リフォームの有無で価格差が出る
築30年超0〜5%建物価値はほぼゼロ。「古家付き土地」として売却するか、解体して更地にするかの判断が必要

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ただし、「建物の価値がゼロ=売れない」ではありません。むしろ福岡市内では、築30年超の一戸建てが「古家付き土地」として活発に取引されています。買い手(多くは建売業者)は建物を解体して新築を建てるため、土地としての価値だけで購入を判断するのです。

解体してから売るべきか?

更地にした方が高く売れる」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。解体費用は木造30坪で150〜250万円程度。解体後に固定資産税の住宅用地特例(最大1/6)が外れ、税額が跳ね上がるリスクもあります。古家付きのまま売却し、解体は買い手に任せる方が合理的なケースも多いです。詳しくは解体費用の記事で解説しています。

土地値の重要性——一戸建て査定の核心

築20年を超えた一戸建ての査定は、実質的に「土地の査定」です。土地の価値を決める要因を重要度順に整理します。

① 立地(最重要)

駅からの距離、生活利便施設へのアクセス、校区の評価。福岡市内では「校区」が価格に影響する度合いが全国平均より高い傾向があります。人気校区の土地は、そうでない校区に比べて坪単価で20〜30%高いケースも珍しくありません。

② 土地の形状と広さ

整形地(長方形に近い形)は最も評価が高い。逆に旗竿地や不整形地は20〜40%程度の減価要因になります。広さは30〜60坪が最も流通しやすい。100坪を超えると個人の買い手がつきにくくなり、建売業者への分割売却を検討する必要があります。

③ 接道条件

前面道路の幅員と接道の長さ。4m未満の道路に接している場合はセットバックが必要で、有効面積が減少します。角地は加算要因(5〜10%程度)。

④ 法的制限

建ぺい率容積率用途地域・高さ制限。買い手(特に業者)はこれらの条件で「何が建てられるか」を計算し、逆算して土地の価値を決めます。

一戸建ての査定で確認すべき書類

登記簿謄本、公図、測量図(あれば)、建築確認済証、固定資産税の納税通知書——これらが揃っていると、査定の精度が格段に上がります。特に境界が確定しているかどうかは、成約価格に直接影響します。

今後の見通し

上昇要因

新築一戸建ての価格高騰。資材費・人件費の上昇により、福岡市内の新築一戸建ては4,000万円を超えるのが当たり前に。新築が高いほど、中古への需要が相対的に増えます。

土地供給の減少。市街化区域内の未利用地は年々減少。新規開発の余地が限られる中、既存の住宅地の土地値は底堅い。

下押し要因

金利上昇による購買力の低下。一戸建ての買い手はほぼ全員が住宅ローンを利用するため、金利の影響はマンション以上に大きい。

相続・施設入所による売却物件の増加。福岡市の高齢化が進むにつれ、郊外の一戸建ての売却が増加。特にバスエリアでは供給過多のリスクがあります。

Base-upの見方

駅徒歩圏の整形地は当面堅調。バスエリアの築古物件は、売却のタイミングが早いほど有利。一戸建ては「場所と土地」で価格の9割が決まるため、マクロの市況よりもミクロの立地条件が圧倒的に重要です。

売主が今できること

地価データの分析

① 「土地の価値」を正確に知る

一戸建ての査定は「建物いくら+土地いくら」の合算です。特に築20年超の物件は、事実上「土地の値段」で売ることになります。まずは土地の相場を正確に把握してください。

② 境界を確認する

境界が確定していない土地は、買い手がつきにくくなります。隣地との境界が不明確な場合は、売却前に確認作業を行うことを強くお勧めします。境界確定測量の費用は30〜60万円程度ですが、成約価格への影響はそれ以上です。

③ 建物のコンディションを正直に把握する

雨漏り、シロアリ、傾き、配管の劣化——。買い手は必ず確認します。事前に把握しておくことで、適切な価格設定と物件状況等報告書の作成ができ、契約後のトラブルを防げます。

④ 「古家付き土地」での売却も視野に

築30年超の建物に価値を見出す買い手は少ない。「古家付き土地」として、土地の価値を前面に出した売却戦略が有効です。解体するかどうかは、専門家と相談して判断してください。

「一戸建ての査定は、デスクの上ではできません。必ず現地に行き、土地の形状、接道、日当たり、近隣の状況を自分の目で確認します。同じ"南区大橋"でも、1本道を挟むだけで坪単価が10万円変わることがある。一戸建ての売却は、現場を知っている担当者に頼んでください」

Base-up 蒲池 美鈴