物件概要
- 種別
- 一戸建て(築22年・木造2階建て)
- 所在地
- 福岡市東区(最寄駅 徒歩18分)
- 面積
- 土地:約140㎡ / 建物:約105㎡
- ローン残高
- 約2,380万円
- 滞納状況
- 3ヶ月(相談時点)
- 売却形態
- 任意売却
- 担当
- 牟田
「住宅ローンが払えなくなった」——この言葉を口にするまでに、M様(50代・男性)は1年以上、一人で悩み続けていました。勤務先の業績悪化で収入が減少し、貯蓄を取り崩しながらなんとか返済を続けてきたものの、ついに3ヶ月連続で滞納。金融機関からの催告書が届き、このままでは競売にかけられるという現実が迫っていました。
このページでは、M様が競売を回避し、任意売却によって生活を立て直すまでの経緯を、ご本人の許可をいただいた上でお伝えします。
相談に至るまで — 1年間の葛藤
M様は20年前、東区にこの家を購入しました。夫婦と子ども2人の4人家族。当時の年収に合わせた35年ローンを組み、順調に返済を続けてきました。
状況が変わったのは2年前。勤務先の事業縮小により残業がなくなり、手取りが月に約8万円減少。妻もパートに出ましたが、住宅ローンの返済額(月額約8.5万円)に加え、固定資産税、修繕費、子どもの教育費を合わせると毎月の収支が赤字に。貯蓄を取り崩す生活が続きました。
「ローンが払えない」ことを誰にも相談できず、金融機関からの電話にも出られなくなっていたM様。催告書が届いた段階で、ようやく「このままではまずい」と動き出しました。
「放置」が最大のリスク
住宅ローンの滞納を放置すると、通常6ヶ月程度で「期限の利益」が失われ、残債の一括返済を求められます。それに応じられなければ、金融機関は競売の申し立てに進みます。競売になると市場価格の6〜7割での売却となり、残債が大きく膨らむだけでなく、裁判所の執行官が自宅を訪問するなど精神的な負担も重くなります。滞納に気づいた時点で専門家に相談することが、最も重要な一歩です。
初回面談 — 「まだ間に合います」
M様が当社に連絡をくださったのは、滞納3ヶ月目の終わり頃でした。初回面談では、まず現状を丁寧に整理しました。
確認した3つのこと
① ローン残高と滞納額——残高は約2,380万円。滞納3ヶ月分(約25.5万円)に遅延損害金を加えた額が未払い。まだ「期限の利益の喪失」には至っていない段階でした。
② 物件の市場価値——東区の築22年一戸建て。駅からやや距離がありますが、小中学校が近く、ファミリー層の需要がある立地。査定の結果、市場価格は約2,100〜2,300万円と判断しました。
③ 今後の生活設計——子ども2人はすでに高校生と大学生。数年後には独立の見込み。M様ご夫婦は「この家に執着はない。ローンから解放されて、身の丈に合った賃貸に移りたい」という意向でした。
任意売却が可能な条件
任意売却は、金融機関(抵当権者)の合意が不可欠です。成立させるには、①まだ競売手続きが開始されていない(または開札前)こと、②売却価格が金融機関にとって競売より有利であること、③売主に売却の意思があること——この3つが揃っている必要があります。M様のケースは3つともクリアしていました。
金融機関との交渉 — 最も重要なプロセス
任意売却の成否を決めるのは、金融機関との交渉です。競売と比べて任意売却が金融機関にとってもメリットがあることを、具体的な数字で示す必要があります。
金融機関に提示した比較資料
競売の場合(想定)
任意売却の場合(当社査定)
金融機関にとって、競売なら回収できるのは約1,350万円。任意売却なら約2,122万円。その差は約770万円。この数字を示すことで、金融機関から任意売却の同意を得ることができました。
なお、任意売却における仲介手数料は、売却代金から控除されるのが通常です。M様が別途持ち出す必要はありませんでした。引っ越し費用についても、金融機関との交渉の中で売却代金からの配分を認めてもらうことができました。
売却の経緯
初回相談・査定(1月上旬)
現地調査と査定を実施。ローン残高・滞納状況を確認し、任意売却の可能性を判断。M様の意向を確認の上、金融機関への打診を開始。
金融機関との交渉(1月中旬〜2月上旬)
金融機関に査定書・比較資料を提出し、任意売却の同意を取得。売り出し価格を2,280万円に設定。同時にM様と今後の住まい(賃貸物件)の情報収集も並行して開始。
販売活動開始(2月中旬)
レインズ・ふれんず登録、ポータルサイト掲載、周辺エリアへのチラシ配布。囲い込みは一切行わず、全業者に情報を公開。1週間で4件の問い合わせ、うち2件が内覧に進行。
購入申込・契約(3月上旬)
30代ファミリーから2,180万円での購入申込。金融機関に価格を報告し承認を取得。売買契約を締結。M様はこの間に東区内の賃貸マンション(家賃5.8万円)を契約。
決済・引き渡し(4月上旬)
買主のローン実行と同日に決済。売却代金から金融機関への返済、仲介手数料、引っ越し費用を精算。抵当権抹消手続きも完了。
売却結果
2,180万円
残債 約200万円(月1万円×分割返済で合意)
競売想定と比べて残債を約830万円圧縮
この事例のポイント
① 「3ヶ月」で相談に来たこと
住宅ローンの滞納が始まってから相談に来るまでの期間は、一般的に6ヶ月〜1年と言われています。M様は3ヶ月目で動き出したことで、まだ「期限の利益の喪失」前であり、金融機関との交渉の余地が十分にありました。これが半年遅ければ、状況は大きく変わっていたかもしれません。
② 競売より高く売れる根拠を示したこと
金融機関が任意売却に同意するのは、「競売より回収額が多い」場合です。感情論ではなく、具体的な査定額と比較資料を示すことが交渉の鍵でした。当社では、周辺の成約事例、現在の販売状況、競売落札相場のデータを一式揃えた上で金融機関に提出しています。
③ 残債の分割返済交渉
売却後も約200万円の残債が残りましたが、金融機関との交渉で月1万円の分割返済という条件で合意しました。収入に見合った無理のない返済計画を立てることで、M様は新しい生活をゼロからスタートすることができました。
任意売却は「普通の売却」とは違います
任意売却には通常の不動産売却にはない特有の手続きがあります。金融機関との事前交渉、配分案の作成、抵当権者全員の同意取得、決済日のスケジュール調整など、経験と専門知識が必要な領域です。「任意売却の経験がどれくらいあるか」は、不動産会社を選ぶ際の重要な判断基準の一つです。
住宅ローンの返済が不安な方へ
まだ滞納していない段階でも相談できます。
「売るべきか、それとも他の方法があるか」
一緒に整理しましょう。
売却後のM様
決済から半年後、担当の牟田がM様にご連絡したところ、以下のようなお話を聞かせていただきました。
「正直に言うと、もっと早く相談すればよかったと思っています。ローンが払えないことが恥ずかしくて、誰にも言えなかった。でも、家を手放した今の方がずっと気持ちが楽です。家賃5.8万円の賃貸で、以前のローン返済額と比べると月2.7万円も軽くなった。残債の返済も月1万円なので、やっていけます。牟田さんが最初に『まだ間に合います』と言ってくれたこと、今でも覚えています」
M様(50代・男性)同じ状況の方へ
住宅ローンの返済が苦しくなったとき、「家を失う」という恐怖から動けなくなる方は少なくありません。しかし、動かない時間が長いほど、選択肢は狭まっていきます。
任意売却は「失敗」ではありません。自分と家族の生活を守るための、合理的な判断です。競売になれば市場価格の6〜7割で処分され、残債も大きく膨らみ、精神的にも追い詰められます。任意売却であれば、市場価格に近い金額で売却でき、残債も最小限に抑えられ、引っ越しのタイミングも自分で選べます。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、相談だけでもしてみてください。相談したからといって、売却しなければならないわけではありません。まず現状を正確に把握し、取れる選択肢を知ること。それだけで、気持ちはずいぶん楽になります。
