海外赴任や海外移住が決まったとき、日本に残す不動産をどうするか——多くの方が迷うポイントです。「帰国するかもしれないから持っておくべきか」「海外にいながら売れるのか」「税金はどうなるのか」。この記事では、海外にいる状態で日本の不動産を売却する場合の手続き・税金・注意点を整理します。
この記事の内容
1. そもそも「非居住者」とは?
所得税法上の居住者は、日本国内に住所があるか、引き続き1年以上居所がある個人です。それ以外の個人が非居住者に当たります。海外勤務が1年以上の予定であれば一般に非居住者と扱われますが、住所は生活の本拠など客観的な事実から判定します。
住民票の転出手続きと税法上の判定は別です。海外滞在の日数だけで決めず、勤務や家族、住居などの状況も含めて税務署・税理士に確認しましょう。
ポイント
非居住者になると、日本国内の不動産を売却したときの税金の扱いが居住者とは異なります。特に「源泉徴収義務」と「各種控除の適用制限」が大きな違いです。

2. 非居住者が不動産を売却するときの税金
非居住者が日本国内の土地・建物を売却して得た所得も、日本で所得税の課税対象になります。原則的な所得税・復興特別所得税の税率は、譲渡した年の1月1日で所有期間が5年超なら15.315%、5年以下なら30.63%です。住民税は翌年1月1日の住所などに応じて確認し、居住者向けの住民税込み約20%・約39%を一律に当てはめないでください。
ただし、居住者と大きく異なる点が2つあります。
①買主による源泉徴収が原則として発生する——売買代金の10.21%が買主により源泉徴収され、税務署に納付されます。
②一部の税制特例が使えない場合がある——3,000万円特別控除は、条件次第で適用できないケースがあります。
3. 源泉徴収10.21%の仕組み
源泉徴収が必要な取引では、買主が代金支払時に10.21%を差し引いて納付します。たとえば対象となる売買代金が3,000万円なら源泉徴収額は306.3万円、差引支払額は2,693.7万円です。次の表は源泉徴収だけを差し引いた例で、諸費用や最終税額を反映した手取りではありません。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売買代金 | 3,000万円 |
| 源泉徴収額(10.21%) | ▲306.3万円 |
| 売主への支払額 | 2,693.7万円 |
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この源泉徴収はあくまで「仮払い」です。確定申告で実際の譲渡所得税を計算し、源泉徴収額との差額を精算します。取得費や仲介手数料などの経費を差し引いた結果、実際の税額が源泉徴収額より少なければ還付を受けられます。
よくある落とし穴
買主が個人で、本人またはその親族の居住用として取得し、対価が1億円以下の場合は源泉徴収が不要です。法人による取得や投資目的ではこの例外は使えません。源泉徴収の有無は決済時の受取額に影響しますが、最終的な税額は確定申告で精算します。
詳しくは「手取り額シミュレーション」をご覧ください。
4. 3,000万円特別控除は使えるか?
居住用財産の3,000万円特別控除は、非居住者でも一定の条件を満たせば適用可能です。
最も重要な条件は、住まなくなった日から3年目の年末までに売却を完了することです。たとえば2026年4月に海外赴任で出国した場合、2029年12月31日までに引渡しを終える必要があります。
つまり赴任が長期化するほど、控除適用の期限に近づいていきます。「いつか帰国したら売ろう」と先延ばしにすると、数百万円の節税メリットを失う可能性があります。
確認しておきたいこと
以前住んでいた家を転居後に貸していても、それだけでマイホームの特別控除の対象外になるわけではありません。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年末までという期限に加え、他の特例との関係や買主との関係など、すべての要件を確認します。
5. 海外から売却するための実務手続き
海外にいながら日本の不動産を売却することは、法的にはまったく問題ありません。ただし、いくつかの実務的なハードルがあります。
住民票・印鑑証明の代替
海外転出により日本の印鑑登録証明書を取得できない場合、海外在留の日本人は在外公館の署名証明を利用する方法があります。税法上の非居住者という区分だけで必要書類は決まりません。国籍・居住地・提出先による要件を先に司法書士へ確認してください。
また、「在留証明」を在外公館で取得すれば、住民票の代替として使えます。いずれも予約制の公館が多いため、売却が決まった段階で早めに手配しましょう。
登記手続き
登記に必要な本人確認・住所・署名等の書類は、司法書士と提出先の要件を確認して準備します。署名証明や在留証明を使う場合も、形式と記載事項を確認してから申請すると手戻りを減らせます。郵送の所要日数には余裕を持たせましょう。
6. 代理人(受任者)の選定と委任状
契約や決済を国内の代理人に委ねる方法がありますが、海外在住であることだけで売買契約の代理人が一律必須になるわけではありません。本人が対応する方法も含め、不動産会社・司法書士・金融機関と実施方法を確認します。
代理人の候補
代理人を立てる場合は、委任する行為、価格などの条件、代金の受取方法を明確にします。委任状の形式や署名証明・認証の要否は提出先によって異なるため、作成前に確認してください。
委任状に記載すべき主な内容
物件の特定(所在地・地番・家屋番号)、委任する行為の範囲(売買契約の締結、代金の受領、所有権移転登記の申請など)、委任の期間、代理人の氏名・住所が必要です。
Base-upの対応
Base-upでは海外在住のお客様の売却実績があり、委任状のひな形提供、在外公館での手続きの案内、時差を考慮したコミュニケーションに対応しています。遠隔でも安心して進められる体制を整えています。
遠方から福岡の不動産を売る段取りを、一緒に整理します
現地確認や書類の準備、連絡方法など、ご事情に合わせて進め方を確認します。メールアドレスだけでも相談を始められます。
遠方からの売却を相談する相談無料・内容は編集できます7. 時差がある中での売却活動の進め方
海外赴任中の売却で意外と負担になるのが、時差のあるコミュニケーションです。
不動産会社とのやり取り
アジア圏であれば時差は1〜2時間程度ですが、欧米圏だと8〜14時間のずれが生じます。メールやチャットベースで進められる不動産会社を選ぶことが重要です。「電話でしか連絡しません」という会社は、海外在住者との取引に慣れていない可能性があります。
内覧対応
鍵を不動産会社に預け、内覧は担当者が対応するのが一般的です。家財が残っている場合は、事前に整理するか、国内の知人・親族に依頼します。
詳しくは「内覧のポイント」をご覧ください。
契約・引渡し
代理人による契約や決済を選ぶ場合は、委任範囲と本人確認の方法、入金確認の担当を事前に決めます。また、日本で確定申告等が必要な海外在住者は、売買の代理人とは別に、納税管理人の選任・届出を税務署へ確認してください。居住国での申告や二重課税の調整も確認が必要です。
8. 帰国してから売るべきか、海外にいる間に売るべきか

結論から言えば、「3,000万円控除の期限」と「市況」のどちらを重視するかが判断の軸になります。
海外にいる間に売る方がよいケース
控除の期限が迫っている場合、帰国予定が未定の場合、空き家のまま放置するリスクが高い場合(台風・水害リスク、劣化、固定資産税の負担)。
帰国してから売る方がよいケース
帰国が1年以内に確定している場合、居住者に戻ることで源泉徴収の問題がなくなる場合、物件に荷物が多く現地での整理が必要な場合。
まず「今の価値」を知ることが出発点
海外にいると日本の不動産市況が見えにくくなります。まず査定で現在の価値を把握し、控除の期限・帰国予定・維持コストと照らし合わせて判断するのが合理的です。査定だけなら遠隔で完結します。
制度・手続きの確認先
国税庁:海外勤務中の不動産売却 / 国税庁:非居住者からの土地等の購入 / 国税庁:マイホームの特別控除 / 外務省:在外公館における証明
制度・手続きの記述を2026年9月9日に確認しました。適用条件はリンク先と物件・契約の状況を照らし合わせて確認してください。
