なぜ確定申告が必要なのか

不動産を売ったら、確定申告が必要です。会社の年末調整では処理されません。「利益が出なかったから不要」も間違い。損が出た場合でも申告すれば税金が戻る可能性があります。この記事では、申告が必要な人・申告した方が得な人を最初に分けて、手順を時系列で解説します。

また、3,000万円特別控除などの特例を使って税額がゼロになる場合でも、特例の適用を受けるためには確定申告が必須です。申告しなければ特例は適用されず、本来不要な税金を後から請求される可能性があります。

申告しないとどうなる?

確定申告をしないまま放置すると、無申告加算税(最大20%)延滞税が課されます。税務署は不動産の売買情報を把握しているため、「申告しなくてもバレない」ということはありません。不動産の登記移転情報は法務局から税務署に通知されます。

税理士への相談

確定申告が必要な人・不要な人

状況 申告 理由
売却益が出た 必要 譲渡所得税を計算・納付するため
売却益は出たが、特例で税額ゼロ 必要 特例の適用を受けるために申告が必須
売却損が出た(損益通算したい) 必要 損益通算・繰越控除の適用を受けるため
売却損が出た(損益通算しない) 不要 税金がかからないため(ただし申告すれば税金が戻るケースあり)
購入価格より安く売却し、特例も不要 不要 譲渡所得がマイナスのため

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迷ったら「申告する」が正解

「自分は申告が必要かどうかわからない」という場合は、申告しておくのが安全です。不要な場合に申告しても問題はありませんが、必要な場合に申告しないとペナルティが発生します。

申告の時期とスケジュール

売却した年

書類の整理・保管

売買契約書、仲介手数料の領収書、測量費の領収書など、売却に関するすべての書類を整理しておく。購入時の売買契約書も準備。

翌年1月〜

申告書類の準備

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成を開始できる。税理士に依頼する場合は、年明け早々に相談するのがベスト。

2/16〜3/15

確定申告・所得税の納付

所轄の税務署に申告書を提出し、所得税を納付。e-Taxでの電子申告も可能。振替納税を選択すれば約1ヶ月後に口座引落。

翌年6月〜

住民税の納付

確定申告の内容に基づいて住民税が計算され、6月以降に通知が届く。給与天引き(特別徴収)か自分で納付(普通徴収)を選択可能。

期限を過ぎた場合

3月15日を過ぎても申告は可能です(期限後申告)。ただし、無申告加算税や延滞税が加算される場合があります。期限内に申告できない場合でも、税額を見積もって先に納付しておくと、延滞税を軽減できます。

必要書類チェックリスト

確定申告に必要な書類は、大きく「税務署に提出するもの」と「手元で計算に使うもの」に分かれます。

税務署に提出する書類

1

確定申告書B(第一表・第二表)
給与所得やその他の所得と合わせて申告する基本の書類。国税庁サイトで作成可能。

2

申告書第三表(分離課税用)
不動産の譲渡所得は「分離課税」のため、この別紙が必要。

3

譲渡所得の内訳書(確定申告書付表)
売却した不動産の詳細(住所、面積、売買価格、取得費譲渡費用など)を記入する書類。税務署でも入手可能。

添付・提示する書類

4

売買契約書のコピー(売却時)
売却価格の証明。

5

売買契約書のコピー(購入時)
取得費の証明。紛失した場合は概算取得費(売却価格の5%)となり、税額が大幅に増える可能性あり。

6

仲介手数料等の領収書
売却時の仲介手数料、測量費、解体費など、譲渡費用の証明。

7

登記事項証明書(全部事項証明書)
法務局で取得。所有期間の確認に必要。

8

本人確認書類
マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証など。

書類は売却直後に整理するのがベスト

売却から確定申告まで数ヶ月空くため、書類を紛失するケースが少なくありません。不動産会社から受け取った書類はすべて1つのファイルにまとめ、翌年の申告まで保管してください。

申告の手順 — 5つのステップ

1

譲渡所得を計算する

売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて「譲渡所得」を算出します。建物は減価償却費を差し引くことを忘れずに。計算方法の詳細は「譲渡所得税の計算方法」をご覧ください。

2

適用できる特例を確認する

3,000万円特別控除、10年超所有軽減税率、相続空き家の特例など、使える特例がないか確認します。特例ごとに追加書類が必要なため、早めに確認を。詳細は「3,000万円特別控除 完全ガイド」をご覧ください。

3

申告書を作成する

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使うと、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が完成します。手書きで作成する場合は、税務署で用紙を入手してください。

4

申告書を提出する

提出方法は3つあります。e-Tax(電子申告)、税務署の窓口への直接提出、郵送です。e-Taxが最も手軽で、24時間提出可能です。

5

税金を納付する

納付方法は、振替納税(口座引落)、クレジットカード、コンビニ、窓口納付などから選べます。振替納税を選ぶと約1ヶ月後の引落しになるため、資金繰りに余裕ができます。

e-Tax(電子申告)の使い方

e-Taxを使えば、自宅のパソコンやスマートフォンから確定申告ができます。税務署に行く必要がなく、添付書類の提出も省略できるため、最もおすすめの方法です。

必要なもの

方法 必要なもの
マイナンバーカード方式 マイナンバーカード + ICカードリーダー(またはスマートフォン)
ID・パスワード方式 税務署で発行されたID・パスワード事前に税務署の窓口で本人確認を受ける必要あり

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e-Taxの手順

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の案内に従って情報を入力していきます。不動産の譲渡所得の場合は、「分離課税の所得」の項目から「土地建物等の譲渡所得」を選択します。

入力を進めると、売却した不動産の情報(住所、面積、売買価格)、取得費、譲渡費用、適用する特例などを順に入力する画面が表示されます。すべて入力すると、税額が自動計算されます。

途中保存ができる

e-Taxでの申告は、作成途中のデータを保存できます。一度にすべてを入力する必要はないため、書類の確認をしながら数日かけて入力することも可能です。

特例を使う場合の追加書類

特例を利用する場合は、基本の書類に加えて追加の書類が必要です。

特例 追加で必要な書類
3,000万円
特別控除
・住民票の除票(売却した住所から転出したことの証明)
・戸籍の附票の写し(居住していた期間の証明が必要な場合)
10年超所有
軽減税率
・登記事項証明書(取得日と売却日が確認できるもの)
・3,000万円控除と同時に使う場合は、上記書類も必要
相続空き家の
3,000万円控除
・被相続人の住民票の除票
・家屋の取壊し証明書(更地で売却した場合)
耐震基準適合証明書(耐震リフォーム後に売却した場合)
・相続時の戸籍謄本
・市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」
損益通算・
繰越控除
・売却損の明細(譲渡所得の内訳書で算出)
・住宅ローンの残高証明書(住宅ローン残債がある場合)

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「被相続人居住用家屋等確認書」は時間がかかる

相続空き家の特例で必要な確認書は、市区町村の窓口で発行してもらう書類です。発行までに1〜2週間かかることがあるため、確定申告の直前ではなく、余裕をもって準備してください。

売却損が出た場合の申告

不動産を購入価格より安く売却して損失が出た場合、確定申告は原則として不要です。しかし、申告することで税金が戻ってくるケースがあるため、損失が出た場合こそ申告を検討してください。

損益通算で給与から税金が戻る

マイホームの売却で損失が出た場合、一定の条件を満たせば、その損失を給与所得や事業所得と相殺(損益通算できます。年収600万円の会社員が500万円の売却損を損益通算すると、所得税・住民税が大幅に軽減される可能性があります。

3年間の繰越控除

1年で通算しきれない損失は、翌年以降最長3年間にわたって繰り越すことができます。売却損が大きい場合、3年間にわたって税金が軽減されるため、メリットは大きいです。

損益通算の適用条件

損益通算・繰越控除が使えるのは「居住用財産」の売却損に限られます。また、売却の相手が親族でないこと、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていることなどの条件があります。

よくある失敗と注意点

税金関連書類の確認

失敗① — 特例を使ったのに申告を忘れる

3,000万円特別控除で税額がゼロになった場合、「税金がかからないから申告不要」と思いがちですが、申告しないと特例は適用されません。数年後に税務署から通知が届き、本来不要だった税金を請求されるケースがあります。

失敗② — 取得費の書類を紛失する

購入時の売買契約書や領収書がないと、取得費は「売却価格の5%」で計算されます。3,000万円で売却した場合、本来2,000万円の取得費が認められるところ、150万円になってしまう可能性があります。購入時の書類は一生保管してください。

失敗③ — 所有期間を間違える

所有期間の判定は「売却した年の1月1日時点」です。実際に5年以上持っていても、1月1日基準で5年未満なら短期譲渡所得(税率39.63%)が適用されます。数ヶ月待つだけで税率が約半分になるケースもあるため、売却タイミングは慎重に。

失敗④ — 住民税のことを忘れる

確定申告で所得税を納付した後、安心してしまいがちですが、6月以降に住民税の通知が届きます。確定申告の内容に基づいて自動計算されるため、追加の手続きは不要ですが、翌年の住民税が増えることを忘れないようにしましょう。

失敗⑤ — 税理士への相談が遅い

確定申告シーズン(2月〜3月)は税理士が最も忙しい時期です。年末までに相談しておくのが理想です。遅くとも1月中に依頼すれば、余裕を持って準備できます。

Base-upの確定申告サポート

費用の計算と資金計画

Base-upでは、売却のお手伝いだけでなく、確定申告まで見据えたサポートを行っています。

売却完了時に書類一式を整理してお渡し

売買契約書のコピー、仲介手数料の領収書、固定資産税の精算書など、確定申告に必要な書類をひとまとめにしてお渡しします。「何をどこに保管したかわからない」という状況を防ぎます。

申告に必要な計算のお手伝い

譲渡所得の計算、減価償却費の算出、適用可能な特例の確認など、申告に必要な計算をお手伝いします。税理士に持ち込む際にも、事前に整理されていればスムーズです。

提携税理士のご紹介

「確定申告を自分でやるのは不安」という方には、不動産売却の確定申告に精通した提携税理士をご紹介しています。特例の適用判断など、専門的な判断も安心です。

売却前から税金のご相談を

「売却したら確定申告が必要か」「特例は使えるか」「税金はいくらか」。これらの疑問は、査定の段階でお答えできます。売却を検討している方も、すでに売却された方も、ご相談いただけます。