「親から相続した不動産、いくらで買ったかわからない」——相続物件や築年数の古い不動産を売却するとき、購入時の契約書が見つからず取得費がわからないケースは珍しくありません。取得費が不明だと税金が大きく増える可能性があるため、対処法を知っておくことが重要です。
取得費がわからないと税金が高くなる理由
譲渡所得の計算式は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」です。取得費が大きいほど譲渡所得は小さくなり、税金も少なくなります。
取得費がわからない場合、税法上は売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」が適用されます。実際の購入価格が売却価格の5%よりも高い(ほとんどのケースでそうです)場合、概算取得費だと税金が大幅に増えてしまいます。
5%概算取得費ルールとは
正式には「租税特別措置法第31条の4」に基づく制度です。取得費が不明な場合、または実際の取得費が売却価格の5%を下回る場合に、売却価格の5%を取得費として使えます。
例えば3,000万円で売却した場合、概算取得費は150万円です。この場合、譲渡費用を100万円とすると、譲渡所得は2,750万円となります。
実際の購入価格のほうが低い場合
バブル崩壊後に購入した物件が値上がりし、実際の取得費が5%を下回るケースもゼロではありません。この場合は概算取得費(5%)を選択したほうが有利です。
5%概算取得費で税額はいくら増えるか — 計算例
実際の取得費がわかる場合と概算取得費の場合で、税額がどれだけ変わるか比較します。
前提条件:売却価格3,000万円、譲渡費用100万円、所有期間10年超(長期譲渡20.315%)、3,000万円特別控除の適用なし
| 項目 | 実際の取得費2,000万円 | 概算取得費(5%) |
|---|---|---|
| 取得費 | 2,000万円 | 150万円 |
| 譲渡所得 | 900万円 | 2,750万円 |
| 税額(20.315%) | 約183万円 | 約559万円 |
| 差額 | — | 約376万円増 |
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取得費がわかるだけで約376万円の節税になります。契約書を探す努力は十分に報われます。
概算取得費を使わずに済む代替証拠
購入時の売買契約書が見つからなくても、取得費を証明できる書類や方法があります。
・購入時の領収書:不動産代金の領収書があれば取得費の証拠になります。
・住宅ローンの借入書類:金銭消費貸借契約書に物件価格が記載されていることがあります。
・登記簿の抵当権設定額:借入額から購入価格を推定できる場合があります。
・不動産取得税の課税通知書:取得時の評価額がわかります。
・購入時のパンフレット・チラシ:分譲価格が記載されていれば参考資料になります。
・通帳の出金記録:購入時期の大口出金から購入価格を推定できます。
税理士・税務署に相談を
代替証拠を使って取得費を算出する場合は、税理士に相談するのが確実です。税務署の見解と一致しない計算方法だと、後から否認されるリスクがあります。
市街地価格指数を使った計算方法
一般財団法人日本不動産研究所が公表する「市街地価格指数」を使い、購入時の推定価格を算出する方法があります。
計算式は「現在の土地価格 ×(購入時の指数 ÷ 現在の指数)」です。ただしこの方法には以下の注意点があります。
・土地の価格推定にのみ使える(建物部分には適用できない)
・税務署が必ず認めるとは限らない(判例により有効とされたケースはある)
・全国平均や都市圏平均の指数であり、個別の物件価格を正確に反映しない
相続した不動産の取得費の考え方
相続で取得した不動産の取得費は、被相続人(亡くなった方)が購入した時の価格を引き継ぎます。相続時の時価や相続税評価額ではありません。
つまり、親が40年前に1,500万円で購入した不動産を相続し、3,000万円で売却した場合、取得費は1,500万円(+購入時の諸費用)です。
なお、相続税を支払った場合は「相続税の取得費加算」特例により、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできます。適用期限は相続開始から3年10か月以内の売却です。
よくある質問
Q. 建物の減価償却はどう計算しますか?
取得費から建物の減価償却分を差し引きます。例えば木造住宅の耐用年数は22年(非事業用は33年)で、経過年数に応じて建物取得費が減少します。
Q. 夫婦共有名義で購入した場合、取得費はどうなりますか?
それぞれの持分に応じた取得費を計算します。持分2分の1なら、購入価格の2分の1が各自の取得費です。
Q. 取得費には購入時の仲介手数料も含められますか?
はい。購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税、印紙税など、購入に直接関連する費用は取得費に含められます。
詳しくは「印紙税の金額一覧」をご覧ください。
詳しくは「仲介手数料の計算方法」をご覧ください。
Q. 概算取得費と実際の取得費は選択できますか?
はい。実際の取得費が5%を下回る場合は概算取得費を選択できます。逆に、実際の取得費が5%を上回る場合は実際の取得費を使うほうが有利です。
「取得費の証拠探しはBase-upでもお手伝いしています。過去の登記情報や金融機関への照会など、お客様と一緒に節税の可能性を探ります。」
Base-up 久保 塁