相続不動産の売却、税金はどうなる?

親が何十年も前に買った家。購入時の書類がなければ、売却額の95%に課税されます。これが相続不動産で最も怖いポイントです。取得費がわからない場合、税法上は売却額の5%しか経費として認められません。3,000万円で売れたら、2,850万円に課税。ただし、取得費を証明する方法はいくつかあります。

しかし相続した不動産の場合、「取得費がわからない」「相続税も払ったのに、さらに売却で税金がかかるのか」という2つの問題が起こります。前者は売却価格の5%とみなす概算取得費で対応しますが、後者の「二重課税」を緩和するのが取得費加算の特例です。

確定申告書類の準備

取得費加算の特例とは

相続税を納めた人が、相続した不動産を相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。取得費が増えれば譲渡所得が減り、結果として譲渡所得税が安くなります。

ポイント

「相続税を払った人」だけが使える特例です。基礎控除内で相続税が発生しなかった場合は適用できません。

適用条件 — 5つの要件

この特例を使うには、以下の5つすべてを満たす必要があります。

#要件
1相続または遺贈で財産を取得した人であること
2その財産について相続税が課税されていること
3相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却すること
4売却したのが相続で取得した財産であること
5確定申告で特例の適用を申告すること

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期限に注意

「3年10ヶ月以内」は相続税の申告期限と同じです。例えば2024年3月に相続が開始した場合、2028年1月末までに売却を完了(引渡し)する必要があります。「契約日」ではなく「引渡日」が基準です。

加算できる金額の計算方法

取得費に加算する相続税額 =
その人の相続税額 × 売却した財産の課税価格 ÷ その人の相続税の課税価格の合計額

※ 2015年1月1日以降の相続に適用される計算式

つまり、「自分が払った相続税のうち、売却する不動産に対応する部分」だけを取得費に加算できます。

具体例で計算してみる

ケース:相続した福岡市内のマンションを売却

売却価格3,000万円
取得費(親の購入価格)1,500万円
譲渡費用仲介手数料等)105万円
相続税額(本人負担分)800万円
売却した不動産の課税価格2,000万円
相続税の課税価格合計8,000万円

Step 1:取得費に加算する相続税額

800万円 × 2,000万円 ÷ 8,000万円 = 200万円

Step 2:譲渡所得の計算

3,000万円 −(1,500万円 + 200万円)− 105万円 = 1,195万円

Step 3:特例なしとの比較

特例なし特例あり
譲渡所得1,395万円1,195万円
税額(長期20.315%)約283万円約243万円
節税効果約40万円

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3,000万円控除との関係

相続した不動産の売却では、取得費加算の特例のほかに3,000万円特別控除が使えるケースがあります。ただし注意点があります。

パターン取得費加算3,000万円控除
居住用(自分が住んでいた)○ 併用可○ マイホーム特例
空き家(被相続人の居住用)× 併用不可○ 空き家特例
非居住用(投資用・空き地等)× 適用なし

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どちらが得か?

空き家特例(3,000万円控除)と取得費加算は併用できないため、どちらが節税額が大きいかを比較する必要があります。多くのケースでは3,000万円控除の方が有利ですが、相続税額が大きく、譲渡所得が3,000万円以下のケースでは取得費加算の方が有利になることもあります。

手続きと必要書類

確定申告の際に以下の書類を添付します。

書類入手先
相続税の申告書の写し本人保管 / 税理士
相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書国税庁サイトからダウンロード
売買契約書の写し不動産会社
取得費がわかる書類(親の購入時の契約書等)相続時に引き継いだもの

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まとめ

費用の計算と資金計画

取得費加算の特例は、「相続税を払った人が、3年10ヶ月以内に相続不動産を売却する場合」に使える制度です。劇的な節税額にはならないものの、確定申告するだけで数十万円の節税になることが多く、見落とすのはもったいない制度です。

3,000万円控除との併用可否は状況によって異なるため、まずは「自分のケースではどの特例が使えるのか」を整理することが大切です。Base-upでは査定時に税金の概算試算もお伝えしていますので、迷ったらご相談いただけます。