3社に査定を出したら、3,000万円・3,200万円・3,500万円。500万円もの差。どれが本当の価格ですか?——こう聞かれたとき、私たちの答えは「一番高い会社ではなく、根拠を説明できる会社を選んでください」です。

同じ物件なのに、なぜ会社によって査定額に数百万円もの差が出るのか。その理由を知っておくことは、「正しい査定額」を見極め、後悔のない売却をするために不可欠です。

まず押さえておきたい事実 — 査定額は「意見」である

不動産の査定額は、公的機関が決める「公定価格」ではありません。不動産会社がそれぞれの方法で算出した「この金額なら、概ね3ヶ月以内に売れるだろう」という見込みにすぎません。つまり、査定額は不動産会社の「意見」です。

意見である以上、会社によって違うのは当然です。問題は、その差がなぜ生まれるのかです。差には「合理的な理由」と「意図的な理由」があります。

査定書の比較検討

合理的に差が出る4つの理由

理由① 参照する成約事例が違う

査定の基礎となるのは、近隣の類似物件の成約事例です。どの事例を「類似」と判断するかは、会社の経験と知見によって異なります。同じマンションの別の部屋を参照する会社もあれば、近隣の別のマンションの事例を使う会社もあります。参照する事例が違えば、当然ながら算出される金額も変わります。

理由② 市場の見通しが違う

「今後3ヶ月で市場はどう動くか」——この判断は会社によって異なります。「福岡はまだ上昇基調」と見る会社と「そろそろ天井」と見る会社では、同じ成約事例を基にしても、査定額に差が出ます。

理由③ 物件の評価基準が違う

日当たり、騒音、管理状態、周辺環境の変化(新駅の開業、大型商業施設の建設など)。こうした要素をどの程度プラス・マイナスに評価するかは、担当者の経験と物件への理解度に依存します。

理由④ 得意分野が違う

マンションに強い会社は、マンション特有の評価項目(管理組合の状態、修繕積立金の水準、大規模修繕の予定など)を細かく見ます。逆に土地や一戸建てが得意な会社がマンションを査定すると、この部分の精度が落ちることがあります。

ここまでの差は「100万〜200万円程度」

合理的な理由による差は、一般的に100万〜200万円程度の範囲に収まります。3,000万円の物件で500万円以上の差がある場合は、次にお伝えする「意図的な理由」を疑ってみてください。

意図的に差をつける3つの理由

理由⑤ 媒介契約を取るための「高値査定」

最も多いケースです。不動産会社にとって、売主と媒介契約を結ぶことが収益の起点になります。複数社が査定を出す場面では、「一番高い金額を出した会社」が選ばれやすいことを不動産会社は知っています。

そこで、実際に売れる見込みがないと分かっていながら、あえて高い金額を提示する会社が出てきます。契約を取ることが目的であり、その金額で売ることは二の次です。契約後に「反応が悪いので値下げしましょう」と提案するシナリオは、最初から想定されています。

理由⑥ 自社買取への誘導

自社で不動産の買取を行う会社の場合、仲介査定額をわざと低く出し、「仲介では売れにくいので、当社で買い取りましょう」と提案するケースがあります。買取は仲介より低い金額になるのが一般的ですが、最初に仲介の見込みを低く見せることで、買取額が「妥当」に見える効果を狙っています。

理由⑦ そもそも地域の相場を把握していない

一括査定サイト経由で全国対応する会社の中には、福岡市の市場に詳しくない会社もあります。成約事例のデータベースが不十分だったり、机上査定の精度が低かったりすると、合理的な根拠なく大きくズレた金額が出ることがあります。

「3社の査定額」を正しく読み解く方法

CASE STUDY

3社の査定額がバラバラだったケース

福岡市中央区・築15年・3LDK・70㎡のマンション。3社に査定を依頼したところ、以下の結果になりました。

会社査定額根拠の説明
A社(大手)3,500万円「周辺の売出価格を参考にしました」
B社(地域密着)3,200万円「同マンションの直近成約事例3件の平均です」
C社(買取兼業)2,800万円「築15年の場合、この程度が妥当です」

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この3つの金額を見比べるとき、注目すべきは金額の大きさではなく根拠の質です。

A社は「売出価格」を参考にしたと言っています。しかし、売出価格は売主の希望であり、実際に売れた金額ではありません。「成約事例」と「売出事例」は別ものです。

B社は同じマンションの成約事例を根拠にしています。具体的なデータに基づいているため、信頼度が最も高いと言えます。

C社は築年数だけを理由にしています。同じ築15年でも、管理状態・立地・間取りによって価格は大きく異なるため、根拠としては不十分です。

査定額の「正しさ」を見極める5つの質問

査定を受けたら、以下の質問をしてみてください

「この金額の根拠となった成約事例を見せてください」——成約事例ではなく売出事例を使っている場合、査定額は高めに出ます。
「この金額で売り出した場合、どのくらいの期間で成約する見込みですか?」——「3ヶ月以内」と即答できるか、曖昧に濁すかで信頼度が分かります。
「売れなかった場合、いつ頃、いくらに値下げする想定ですか?」——最初から値下げシナリオを持っている場合、査定額自体が高すぎる可能性があります。
「御社の過去の査定と成約の乖離率はどのくらいですか?」——実績を数字で示せる会社は、査定精度に自信がある証拠です。
「手取り額はいくらになりますか?」——査定額ではなく、諸費用・税金を引いた手取り額を提示できるかは、売主目線で考えているかの指標です。

「最高値」ではなく「最正値」を選ぶ

複数社の査定額を比較するとき、もっとも避けるべきなのは「一番高い金額を出した会社に頼む」という判断です。

不動産会社を選ぶ基準は、査定額の高さではなく、査定額の「根拠の質」と「担当者への信頼感」です。正確な査定は、適正な売り出し価格につながり、適正な売り出し価格は早期の成約と高い手取り額につながります。

私たちBase-upは、査定額と成約価格の乖離率を全件公開しています。「高い査定額」ではなく「正確な査定額」を出すことが、売主様の利益を最大化する近道だと確信しているからです。

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臼杵のコメント

3社の査定を比較して「なぜこんなに違うのか」と困惑される方は多いです。大切なのは、金額の大小ではなく「この金額になった理由」に納得できるかどうか。根拠を聞いて腑に落ちた会社を選んでください。それが結果的に、後悔のない売却につながります。