「高く売りたい」は当然の希望です。ただし「高く売る」と「高い査定額を選ぶ」はまったく別の話です。高い査定額に飛びついた結果、半年売れずに値下げを繰り返し、最初から適正価格で出した場合より安く売れる——このパターンが最も多い「高く売ろうとして安く売った」失敗です。

しかし、不動産売却の現場に長く立っていると、「高く売ること」だけを最優先にした結果、かえって不本意な結果になったケースを少なからず見てきました。このコラムでは、「高く売りたい」という気持ちとどう向き合うべきかを、正直にお話しします。

「高く売れた」は、いつ判断できるのか

まず考えてほしいのは、「高く売れた」の基準は何かという問いです。

近隣の物件より高く売れた、査定額以上で売れた、購入時の金額を上回った——。「高い」にはいろいろな基準がありますが、どの基準で見るかによって満足度は変わります。そして、その判断は売却活動中ではなく、売却が終わり、次の生活が落ち着いてから初めてできるものです。

私たちの経験では、売却後に「良い売却だった」と振り返る方に共通しているのは、金額の高さよりも「納得感」でした。なぜこの金額なのか、根拠が分かっている。売却のプロセスに不透明な部分がない。時間的・精神的な負担が想定の範囲内だった——。こうした要素が揃っていると、結果への満足度は高くなります。

ガラス越しのオフィス風景

「最高値」を追い求めるコスト

「できるだけ高く」を追求すること自体は悪いことではありません。ただし、そこには見えにくいコストが伴います。

コスト① 時間

相場より高い価格で売り出した場合、買い手が見つかるまでに時間がかかります。1ヶ月で決まるはずの売却が3ヶ月、半年と延びれば、その間の固定資産税管理費、住宅ローンの支払いは続きます。住み替えの場合は仮住まいの家賃も重なります。

コスト② 売れ残りの印象

不動産ポータルサイトに長期間掲載され続けた物件は、購入検討者から「何か問題があるのでは?」と思われやすくなります。この印象は一度つくと払拭が難しく、値下げしても反応が鈍いままという悪循環に陥ることがあります。

コスト③ 精神的な消耗

売却が長引くと、「いつ売れるのか」という不安が日常にのしかかってきます。内覧のたびに部屋を片付け、期待しては断られ、値下げを提案されて葛藤する——。この精神的な負担は、金額では測れません。

コスト④ 機会の損失

売却の遅延によって、住み替え先の物件を逃す、転勤先での新生活のスタートが遅れる、相続税の納付期限に間に合わなくなる——。こうした「売れていれば得られたはずの選択肢」を失うコストは、数字には表れません。

ポイント

「高く売る」と「早く売る」はトレードオフの関係にあります。大切なのは、ご自身の状況に合った「最適なバランス」を見つけることです。

「安く売った」と後悔する人の共通点

逆に、「もっと高く売れたのではないか」と後悔する方もいらっしゃいます。後悔する方の多くに共通しているのは、以下の3つです。

① 根拠を理解しないまま価格を決めた——不動産会社に言われるまま、査定額の根拠を確認しないまま売り出し価格を決めてしまった。なぜこの金額なのか、自分で納得する手順を踏まなかった。

② 比較検討をしなかった——最初に相談した1社だけで決めてしまい、他の選択肢を検討しなかった。結果的にもっと条件の良い方法があったかもしれないという「もしかして」が残った。

③ 急かされて判断した——「この買主を逃すと次がいつ来るか分かりません」と急かされ、十分に考える時間がないまま判断してしまった。

いずれも、金額そのものではなく「プロセスへの不満」が後悔の原因です。適正価格であっても、十分な説明と納得のプロセスがなければ不満は残りますし、多少の価格差があっても、プロセスに納得していれば満足できます。

売却で「本当に大切なこと」は4つある

数多くの売主様とお話してきた経験から、売却の成否を決めるのは価格だけではないと確信しています。本当に大切なのは、以下の4つのバランスです。

要素内容
価格適正な市場価格に基づいた、根拠ある金額であること
時間ライフプランに合った期間で売却が完了すること
透明性売却のプロセスが見え、判断の根拠が理解できること
安心感精神的な負担が小さく、信頼できるパートナーがいること

人生の状況によって、この4つの優先順位は変わります。相続で急いでいるなら時間が最優先、じっくり構えられるなら価格を重視できる。大切なのは、自分にとっての優先順位を認識した上で、意識的に選ぶことです。

EPISODE

「100万円の差より、3ヶ月の安心が大事だった」

転勤に伴い福岡市中央区のマンションを売却されたS様。複数社に査定を依頼され、最も高い金額は3,500万円、私たちの査定は3,280万円でした。

ヒアリングの中で「赴任先での新生活の準備に集中したい」「遠方から売却を長引かせたくない」というお気持ちが分かりました。3,280万円で売り出した結果、6週間で3,250万円で成約。

S様からは後日、「あの時3,500万円で出していたら何ヶ月かかったか分からない。結果的に3,250万円で十分満足しているし、何より新生活のスタートを切れたことが一番大きかった」とおっしゃっていただきました。

「正直な金額」が結果的に「高く売れる」理由

逆説的ですが、最初から適正な価格で売り出した方が、結果的に手取りが多くなるケースは少なくありません。

高すぎる価格で売り出して長期間売れず、段階的に値下げを繰り返した場合と、最初から適正価格で売り出して早期に成約した場合を比較すると、後者の方が手取り額が多いことがあります。前者は値下げ分に加え、期間中の維持費・ローン返済・機会損失が重なるためです。

私たちが「正直な査定額」を大切にしているのは、きれいごとではなく、それが売主様の手取りを最大化する最も確実な方法だからです。

「高く売りたい」を叶える、正しい方法

「高く売りたい」という気持ちそのものは、否定しません。ただ、その「高く」の意味を少しだけ広げてみてほしいのです。

適正価格を知ること——まず「いくらで売れるか」の正確な把握が出発点です。高すぎる査定額は期待を膨らませますが、それは売れる金額ではありません。

手取り額で考えること——売却価格から仲介手数料、税金、諸費用を引いた手取り額が、実際に手元に残るお金です。売却価格が高くても、余計なコストがかかれば意味がありません。

タイミングを計ること——需要期に売り出す、競合物件が少ないタイミングを狙うなど、市場の状況を活かした戦略で、適正価格の範囲内で上値を目指すことは可能です。

情報を広く届けること——物件情報を自社だけで抱え込まず、広くオープンにすることで、より多くの購入希望者の目に触れ、好条件での成約につながる可能性が高まります。

久保のコメント

「高く売りたい」は正しい。でも「高く売ること」が目的になった瞬間、判断が歪みます。大切なのは、売却を通じてご自身の人生をどうしたいか。金額はそのための手段です。私たちは、売主様の「本当の目的」に沿った提案をしたいと考えています。

「いくらで売れるか」の
正直な答えをお伝えします。

売却するかどうか決まっていなくても大丈夫です。
まずは根拠ある査定額で、判断材料をお持ちください。

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基礎知識

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