買主が見つかり、いよいよ売買契約——しかし、多くの売主様にとって契約書を読むのは初めての経験です。不動産会社から「ここに署名・捺印をお願いします」と言われるがまま進めてしまうと、後から「こんな条件だったのか」と気づくことになりかねません。この記事では、売主の立場で必ず確認すべき5つのポイントを解説します。

1. 売買契約書の全体構成

不動産の売買契約書は、通常10〜15ページ程度の書面です。宅地建物取引業法に基づき、不動産会社が作成します。全体の構成は概ね以下の通りです。

まず冒頭に売主・買主・物件の表示があり、次に売買代金・手付金・支払い条件が記載されます。その後、所有権移転・引渡しの時期、契約不適合責任、解除に関する条項、そして特約条項が続きます。

この中で売主が特に注意すべきは、手付金・契約不適合責任・引渡し時期・ローン特約・特約条項の5つです。

新しい一歩を踏み出す鍵

2. ポイント①:手付金の額と解除条件

手付金は、契約締結時に買主から売主に支払われる金銭です。通常は売買代金の5〜10%程度で、売買代金の一部に充当されます。

手付解除の期限に注意

手付解除とは、買主が手付金を放棄することで、または売主が手付金の倍額を返還することで、契約を解除できる仕組みです。重要なのは「いつまで手付解除ができるか」という期限です。

契約書に「相手方が契約の履行に着手するまで」と書かれているのが一般的ですが、「○年○月○日まで」と具体的な日付が入っている場合もあります。売主としては、手付解除の期限が短すぎると、買主がキャンセルした場合のリスクが小さくなる一方、期限が長すぎると不安定な状態が続きます。

売主として確認すべきこと

手付金の額が売買代金の5%未満の場合は、買主がキャンセルしやすくなります。また、手付解除期日が明記されていない場合は「履行の着手」の解釈でトラブルになることがあります。日付を明記してもらうのが安全です。

3. ポイント②:契約不適合責任の範囲と期間

2020年の民法改正により、旧「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。売主が引き渡した物件が契約の内容に適合しない場合、買主は修補請求・代金減額・損害賠償・契約解除を求めることができます。

売主が負う責任の範囲

契約書では「売主は引渡しから○ヶ月間、契約不適合責任を負う」と記載されます。個人間売買では3ヶ月とするのが一般的です。ただし、売主が知っていた不具合を告知しなかった場合は、期間に関係なく責任を問われます。

免責の特約は有効か

「売主は契約不適合責任を一切負わない」という免責特約を入れることも法的には可能です。ただし、売主が知っていて告げなかった不具合については、免責特約があっても責任を免れません。つまり「何もかも免責」にはならないということです。

よくある落とし穴

物件状況報告書に「不具合なし」と記載したにもかかわらず、引渡し後に雨漏りやシロアリ被害が発覚した場合、売主は責任を問われます。「気づいていなかった」で通るかどうかは、不具合の程度と調査義務の範囲によります。少しでも気になる点は、正直に告知することが売主自身を守ることになります。

4. ポイント③:引渡し時期と条件

引渡し日は、残代金の支払いと同日に設定されるのが一般的です。売主は引渡し日までに以下を完了しなければなりません。

抵当権の抹消——住宅ローンが残っている場合、金融機関と連携して残債を完済し、抵当権を抹消します。通常は残代金を受領すると同時に完済手続きを行います。

物件の明け渡し——家財道具の撤去、引越し完了、鍵の引渡し。「現況有姿」と記載されていても、ゴミや残置物を放置していいわけではありません。

境界の明示——土地や一戸建ての場合、売主は引渡しまでに境界を明示する義務があります。境界確定測量が必要になるケースもあります。

引渡しが遅れた場合

契約書に定めた引渡し日を売主が守れなかった場合、買主から遅延損害金を請求される可能性があります。引越しスケジュール、ローンの完済手続き、測量の手配などは余裕をもって進めましょう。

5. ポイント④:ローン特約(融資利用の特約)

買主が住宅ローンを利用する場合、「融資が承認されなかった場合は契約を白紙解除できる」というローン特約が付くのが一般的です。

売主にとって重要なのは、ローン特約の期限です。通常は契約から3〜4週間程度に設定されますが、この期間中は「ローンが通らなかったらキャンセル」というリスクを抱えたまま待つことになります。

売主が確認すべきこと

ローン特約の期限が不当に長くないか(1ヶ月を超える場合は要注意)。買主の事前審査が通っているか。融資申込先の金融機関が記載されているか。これらが曖昧な場合、ローン特約を理由にした「実質的なキャンセル権」を買主に与えてしまうことになります。

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6. ポイント⑤:特約条項の内容

契約書の末尾にある「特約条項」は、標準条項にない個別の合意事項が記載されるセクションです。ここが実は最も重要です。

よくある特約の例

設備の引渡し条件——エアコン・照明・カーテンレールなどの付帯設備を引き渡すか撤去するか。「設備表」とセットで確認します。

測量の実施条件——土地の場合、「確定測量を実施して引き渡す」か「現況測量のまま引き渡す」かで売主の負担が大きく変わります。

建物解体の条件——古家付き土地の場合、解体費用をどちらが負担するかの取り決め。

告知事項——近隣トラブル、事故歴、心理的瑕疵などの告知内容が特約に盛り込まれることがあります。

特約の「追加」に注意

契約直前になって買主側から特約の追加を求められることがあります。「現況有姿」「免責」「引渡し猶予」などの文言が追加された場合、売主に不利な条件が紛れ込んでいないか必ず確認してください。分からない条項は、署名する前に不動産会社に説明を求めましょう。

7. 契約前に確認すべきチェックリスト

不動産会社での相談風景

売買契約に署名する前に、以下を確認しましょう。

チェック項目確認ポイント
手付金の額売買代金の5〜10%が目安。少なすぎないか
手付解除の期限日付が明記されているか
契約不適合責任の期間3ヶ月が一般的。免責特約の有無
引渡し日引越し・ローン完済・測量のスケジュールに無理がないか
ローン特約の期限1ヶ月以内が目安。事前審査の状況
設備表・物件状況報告書契約書と矛盾がないか
特約条項追加された条項を一つずつ確認
違約金の額売買代金の10〜20%が一般的

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Base-upの姿勢

Base-upでは契約書の全条項を、専門用語を使わず分かりやすい言葉でご説明しています。「よく分からないけどサインした」ということがないよう、ご納得いただけるまで何度でもご質問ください。