「売却したのに贈与税がかかる」と聞いて、驚かれる方も多いかもしれません。実は、不動産の売却においても、取引の内容や相手によっては贈与税が課される場合があります。特に親族間での売買や、相場よりも著しく低い価格での取引は要注意です。このコラムでは、福岡市で不動産売却を検討している方に向けて、贈与税が発生しやすい具体的なケースと、そのリスクを回避するためのポイントをわかりやすく解説します。
そもそも「贈与税」とは?売却と何の関係がある?
贈与税とは、個人から個人へ無償で財産を譲り受けた場合に、受け取った側が支払う税金です。「売却=対価を受け取る行為」なので、一見すると贈与税とは無縁に思えます。しかし、税務上の判断は必ずしも形式上の取引形態だけで決まるわけではありません。
税務署が問題視するのは、「実態として贈与があったかどうか」です。例えば、1,000万円の価値がある不動産を100万円で息子に売ったとすれば、差額の900万円分は実質的に贈与したとみなされる可能性があります。これをみなし贈与と呼びます。不動産売却において贈与税の問題が生じるのは、主にこの「みなし贈与」が発動するケースです。
みなし贈与とは
実際には贈与の契約を結んでいなくても、著しく低い対価での売買など、実質的に財産を無償で移転したと判断される場合に贈与があったものとして課税される仕組みです。相続税法第7条に根拠があります。
贈与税が発生する代表的なケース
不動産の売却において贈与税が問題になりやすいケースを整理します。下記の表を参考にしてください。
| ケース | 内容 | リスクの高さ |
|---|---|---|
| 低額譲渡 | 時価より著しく低い価格で親族に売却する | ★★★ 高 |
| 債務の肩代わり | 売却代金で完済できないローンを親族が代わりに返済する | ★★★ 高 |
| 売却益の移転 | 売却で得た利益を親族の口座に送金する | ★★☆ 中 |
| 共有持分の無償譲渡 | 共有不動産の持分を無償で共有者に渡す | ★★★ 高 |
| 名義のみの売買 | 実態のない売買契約を結び名義だけ移す | ★★★ 高 |
これらに共通しているのは、「実際に財産的価値が移動しているにもかかわらず、正当な対価が支払われていない」という点です。福岡市内でも、特にマンションや戸建ての親族間取引においてこうしたケースが見受けられます。
「家族だから大丈夫」は危険な思い込み
親子間や夫婦間の取引だからこそ税務署はチェックを厳しくする場合があります。贈与税の申告を怠ると、後から無申告加算税や延滞税が上乗せされるリスクがあります。身内との取引ほど慎重に進めましょう。
親族間売買での「低額譲渡」に要注意
最も頻繁に問題になるのが、親族間売買における低額譲渡です。例えば「父親が所有する博多区のマンションを、息子に安く売りたい」というケースは珍しくありません。気持ちはよくわかります。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
相続税法第7条では、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合には、その譲渡があった時において、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額を、贈与によって取得したものとみなす」と定めています。「著しく低い価額」の基準については明確な数値規定はありませんが、一般的に時価の概ね80%を大きく下回る場合には問題になりやすいとされています。
「お客様からよく相談を受けるのが、"親から安く買いたいけど問題ない?"というケースです。気持ちはよくわかりますが、時価との差額が大きいほど贈与税のリスクが高まります。まずは適正な売却価格を把握することが第一歩です。」
Base-up 牟田 太一では、「時価」とはどうやって判断するのでしょうか。不動産の場合、路線価や固定資産税評価額が参考になりますが、税務署は不動産鑑定評価額や近隣の成約事例なども総合的に判断します。福岡市は近年地価が上昇傾向にあるエリアが多く(特に天神・博多・西区など)、数年前に購入した物件でも現在の時価が大幅に上昇しているケースがあります。古い購入価格を基準に「安く売る」と、思わぬ贈与税の課税につながりかねません。
不動産鑑定を活用する方法
親族間売買で適正価格を証明したい場合、不動産鑑定士に依頼して正式な鑑定評価書を取得する方法があります。費用は物件によりますが目安として20〜40万円程度。その価格で売買すれば「時価での取引」として贈与税のリスクを回避できます。費用対効果を考えると、特に高額物件では有効な手段です。
贈与税を避けるための実践的な対策
贈与税のリスクを回避するために、売却前に押さえておくべき対策を紹介します。
① 第三者への売却を優先的に検討する
最もシンプルな方法は、親族ではなく市場での売却を選ぶことです。不特定多数の買主と行う通常の売買取引であれば、適正な市場価格で取引されるため、みなし贈与の問題は基本的に生じません。福岡市の不動産市場は現在も活況が続いており、適切な価格設定で売り出せばスムーズに売却できるケースが多くあります。
② 親族間売買でも「適正価格」での取引を徹底する
やむを得ず親族間で売買する場合は、不動産鑑定評価や複数の不動産会社による査定を取得し、時価に近い価格で取引することが重要です。また、住宅ローンを利用する場合、金融機関が親族間売買に難色を示すケースも多いため、事前に確認が必要です。
③ 売却代金の使途に注意する
不動産を売却して得た代金を、そのまま子どもや親族の口座に振り込んだり、親族のローンを代わりに返済したりすると、その金額が贈与とみなされます。売却益は必ず売主本人の口座で受け取り、その後の使い方についても税理士に相談することをおすすめします。
④ 贈与税の非課税制度を活用する
もし「親族に財産を渡したい」という目的があるのであれば、売却という形ではなく、正式な贈与として処理し、各種非課税制度を活用する方が合理的な場合もあります。例えば、住宅取得資金贈与の特例(一定の要件のもとで最大1,000万円まで非課税)や、年間110万円の基礎控除を活用した暦年贈与などが選択肢になります。
税務申告は必ず専門家に相談を
贈与税の判断は個別のケースによって大きく異なります。「自分のケースは大丈夫だろう」と独断で判断せず、必ず税理士や税務署に相談してください。不動産会社は税務アドバイスの専門家ではありませんが、Base-upでは信頼できる税理士をご紹介することも可能です。
まとめ
不動産の売却で贈与税が発生するのは、主に「みなし贈与」が生じるケース——特に親族間での低額譲渡や、売却代金・ローンの肩代わりなどが該当します。福岡市は地価の上昇が続いているエリアが多く、「数年前の価格感覚」で取引すると思わぬ課税リスクが生まれます。重要なのは、まず現在の正確な不動産の時価を把握することです。適正価格での取引を行い、税務リスクを回避した上で、安心して売却を進めましょう。不明点があれば、ぜひBase-upへお気軽にご相談ください。
