「相続した空き地をそのままにしているが、売っても大した税制優遇はないだろう」と思っていませんか?じつは2020年に創設された「低未利用地等の譲渡に係る長期譲渡所得の100万円特別控除(低未利用地特例)」を使えば、条件を満たした譲渡所得から最大100万円を差し引くことができます。福岡市内でも空き地・空き家の相談が増えているなか、この特例を知っているかどうかで手取り額が大きく変わります。この記事では、制度の概要から福岡市ならではの活用ポイント、手続きの流れまでをまとめて解説します。

低未利用地特例とは何か

低未利用地とは、現に利用されていないか、周辺の土地に比べて利用度が著しく低い土地のことです。具体的には、草が生い茂ったままの空き地、長らく人が住んでいない空き家とその敷地、駐車場としても使われていない更地などが該当します。

この特例は、空き地・空き家問題の解消を目的として2020年7月に創設されました。正式名称は「低未利用土地等の上にある権利の譲渡に係る長期譲渡所得の特別控除」(租税特別措置法第35条の3)といい、要件を満たして譲渡すれば長期譲渡所得から100万円を控除できます。

長期譲渡所得の税率はどのくらい?

所有期間が5年超の不動産を売った場合の長期譲渡所得には、所得税15.315%・住民税5%(合計20.315%)が課税されます。100万円の控除が受けられれば、それだけで約20万円の税負担が減る計算になります。

なお、当初は売却価格(譲渡対価)が500万円以下という上限がありましたが、2023年度税制改正で800万円以下へ引き上げられました。これにより、郊外の土地だけでなく福岡市内の住宅地でも活用しやすくなっています。

適用できる5つの要件を確認する

特例を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。1つでも外れると適用できないため、売却前にしっかり確認しましょう。

要件内容
①所有期間売却する年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていること
②低未利用性売却時点で「低未利用地」(空き地・空き家など)であること
③譲渡対価売却価格(土地・建物の合計)が800万円以下であること
④売却後の利用買主が売買後に土地を利用する見込みがあること
⑤確認書の取得市区町村が発行する「低未利用土地等確認書」を取得していること

「800万円以下」は1筆ごとの判定ではありません

隣接する複数の土地を同じ買主に一括で売る場合、それらをまとめた合計額で800万円以下かどうかを判定します。分筆すれば個別に適用できるわけではないので注意が必要です。また、同一年中に同じ制度を2回以上使うことも認められていません。

要件④の「買主が利用する見込み」については、買主が自己利用・賃貸・事業利用のいずれかを予定していれば問題ありません。ただし、単なる転売目的の買主には確認書が発行されないケースがあるため、買主の意向を事前に把握しておくことが大切です。

福岡市での活用シーンと注意点

福岡市では、昭和40〜50年代に開発された戸建て住宅地(早良区・城南区・南区の一部など)を中心に、相続によって引き継いだ使われていない土地や古家の相談が増えています。こうしたケースのなかに、低未利用地特例の好適な活用対象が多く含まれています。

「相続で受け取った古家付き土地を"まず売れるかどうか"で相談に来る方が多いですが、売却価格が800万円前後に収まるなら、この特例の活用を必ず検討していただきたいと思っています。手続きは少し手間ですが、20万円前後の節税効果は決して小さくありません」

Base-up 牟田 太一

福岡市内での活用が向いているケースと、逆に注意が必要なケースを整理します。

活用が向いているケース:博多区・中央区以外の住宅地で、路線価が比較的低い地域の狭小地・旗竿地。相続した古家付き土地で解体費用を差し引くと実質的な手取りが少ない場合も、税負担を減らせる分だけ実益が大きくなります。

注意が必要なケース:博多区・中央区・天神周辺のように地価が高く、800万円を超えることが多い土地では、そもそも要件を満たせません。また、すでに3,000万円特別控除(マイホームの売却特例)を適用している場合、同一年中に低未利用地特例を重ねて使うことはできません。

福岡市での確認書の取得先

低未利用土地等確認書は、福岡市の場合は各区の「都市計画課」または「建築住宅課」が窓口になります。2026年現在、申請には売買契約書の写し・物件の位置図・現況写真などが必要です。事前に管轄の区役所へ電話で必要書類を確認してから動くとスムーズです。

税額シミュレーションで効果を実感する

具体的な数字で特例の効果を見てみましょう。以下は福岡市南区の旗竿地(所有期間7年)を600万円で売却したケースです。

項目特例なし特例あり
譲渡対価600万円600万円
取得費+譲渡費用150万円150万円
特別控除0円100万円
課税対象の譲渡所得450万円350万円
税額(約20.315%)約91万円約71万円
節税効果約20万円

同じ600万円の売却でも、特例を使うだけで約20万円の税負担が軽減されます。取得費が不明で概算取得費(売却額の5%)を使う場合は課税所得がさらに大きくなるため、節税効果はより顕著になります。

取得費が不明な場合でも使えます

昭和・平成初期に購入した土地や相続で取得した土地は、売買契約書が残っていないことが多くあります。取得費が証明できない場合は「売却額の5%」を概算取得費として使えますが、その分だけ課税所得が増えます。だからこそ、低未利用地特例の100万円控除の価値が相対的に高まるのです。

申告に必要な書類と手続きの流れ

低未利用地特例は、確定申告で自ら申請して初めて適用されます。売却しただけでは自動的に適用されないため、手続きを忘れないようにしましょう。

STEP 1:市区町村から確認書を取得する
売買契約締結後、福岡市の管轄窓口(各区の都市計画課・建築住宅課)に申請します。必要書類は売買契約書の写し、現況写真、位置図、申請書(窓口でもらえます)が基本です。発行まで1〜2週間かかることがあるため、早めに動くのがコツです。

STEP 2:確定申告書に必要書類を添付する
翌年2月16日〜3月15日の確定申告期間中に、以下の書類を添付して申告します。

書類取得先・備考
低未利用土地等確認書福岡市各区の窓口
売買契約書の写し手元のものをコピー
譲渡所得の内訳書税務署・国税庁HPから取得
登記事項証明書法務局(オンライン申請可)

確定申告は必ず自分で行うか、税理士に依頼を

低未利用地特例は分離課税で申告する必要があります。給与所得だけを申告している会社員の方は、不動産の譲渡所得を別途申告することに慣れていないケースも多いため、心配な方は税理士への依頼を検討してください。売却が複数年にまたがる場合や他の特例との併用も含め、専門家のチェックが安心です。

また、特例は個人が売主である場合にのみ適用されます。法人名義の土地には使えないため、法人所有の土地を売却する場合は別の節税策を検討することになります。

まとめ

低未利用地特例は、800万円以下で売れる空き地・空き家を長期保有している方にとって、シンプルかつ効果の大きい節税策です。福岡市内では、郊外の住宅地や相続した旧家の敷地など、この特例にフィットするケースが少なくありません。要件の確認・確認書の取得・確定申告という三つのステップを押さえれば、手取り額を約20万円増やすことも十分可能です。「自分の土地が対象になるか」から一緒に考えますので、まずはお気軽にご相談ください。