家やマンション、土地を売ろうと思ったとき、最初に知りたいのは「何から始めればいいのか」「全体でどれくらい時間がかかるのか」ではないでしょうか。

不動産売却は、相談から引渡しまでおおむね3〜6ヶ月が目安です。物件の種類や立地、価格帯によって差はありますが、やるべきことの順番はほぼ同じです。このページでは、売却の流れを9つのステップに分けて、それぞれ「何をするのか」「どのくらいかかるのか」「気をつけることは何か」を整理します。

初めて売却する方はもちろん、「なんとなく流れは知っているけど、全体像を整理しておきたい」という方にも読んでいただける内容です。

売却の全体像 — 9ステップと期間の目安

まず全体像を押さえましょう。不動産売却は大きく「準備」「活動」「契約・引渡し」「売却後」の4つのフェーズに分かれます。

フェーズステップ期間の目安
準備①情報収集・相場把握1〜2週間
②査定依頼1〜2週間
③媒介契約の締結1〜3日
活動④売却活動1〜3ヶ月
⑤内覧対応(④と並行)
⑥購入申込み・交渉1〜2週間
契約・引渡し⑦売買契約1日
⑧決済・引渡し契約の1〜2ヶ月後
売却後⑨確定申告翌年2〜3月

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合計で3〜6ヶ月が一般的ですが、人気エリアのマンションであれば1〜2ヶ月で売れることもありますし、郊外の土地では半年以上かかるケースもあります。スケジュールに余裕を持って動き始めることが大切です。

「いつまでに売りたいか」から逆算する

転勤・住み替え・相続税の納付期限など、期限がある場合は、その日から逆算して動き出しましょう。引渡しまで3ヶ月かかるなら、少なくとも4〜5ヶ月前には査定を依頼するのが安全です。

不動産売却の相談

ステップ1:情報収集・相場を把握する

最初にやるべきことは、自分の物件がいくらくらいで売れそうかを大まかに把握することです。いきなり不動産会社に連絡する前に、自分で相場感をつかんでおくと、その後の査定額を冷静に判断できます。

相場を調べる3つの方法

①不動産取引価格情報(国土交通省)。実際に取引された価格が公開されています。「エリア × 物件種別」で絞り込めるため、最も信頼性の高いデータです。

レインズマーケットインフォメーション。不動産流通機構が公開している成約事例データベースです。マンションは築年数や面積で絞り込めるため、より細かい比較ができます。

③ポータルサイト(SUUMO・HOME'Sなど)。現在売り出し中の物件の価格がわかります。ただし、これは「売り出し価格」であり「成約価格」ではない点に注意してください。実際にはここから値引きが入ることが大半です。

「AI査定」は参考程度に

最近増えている「AI査定」「ネット査定」は、過去データの平均値をもとにした概算です。物件の個別事情(日当たり・管理状態・リフォーム歴など)は反映されません。「だいたいこのくらいか」という目安には使えますが、それだけで判断するのは危険です。

この段階で準備しておくもの

査定依頼をスムーズに進めるため、以下の情報を手元に揃えておくと便利です。すべて揃っていなくても査定は受けられますが、正確な査定のためにはあった方がよいものです。

物件の基本情報として、所在地・面積・築年数・間取り。権利関係として、登記簿謄本(法務局で取得可能)や権利証。ローン情報として、住宅ローンの残高。管理関係(マンションの場合)として、管理費・修繕積立金の月額、大規模修繕の予定。

ステップ2:不動産会社に査定を依頼する

相場のイメージがつかめたら、不動産会社に査定を依頼します。査定には「簡易査定(机上査定)」「訪問査定」の2種類があります。

簡易査定は、物件の基本情報をもとに、過去の成約事例と比較して算出する方法です。所要時間は通常1〜3日。物件を見ずに出す数字なので、精度は限定的です。

訪問査定は、担当者が実際に物件を見て、日当たり・眺望・建物の状態・周辺環境などを確認したうえで算出する方法です。所要時間は現地確認30分〜1時間、結果報告まで約1週間。売却を具体的に検討しているなら、最初から訪問査定を依頼するのがおすすめです。

査定額=売れる金額ではない

これは非常に重要なポイントです。査定額は「この価格なら3ヶ月程度で売れるだろう」という不動産会社の見立てにすぎません。高い査定額を出す会社が良い会社とは限りません。なぜその金額になるのか、根拠を確認してください。査定額と実際の成約価格の差(乖離率)が小さい会社ほど、正直で信頼できる査定をしています。詳しくは「不動産査定の仕組み」をご覧ください。

何社に査定を依頼すべきか

2〜3社に依頼するのが適切です。1社だけでは比較ができず、5社以上では対応に追われるだけです。大手・地元密着・それ以外の1社というバランスで選ぶと、異なる視点からの査定が得られます。

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相場を知るだけでも
大丈夫です。

「まだ売ると決めていない」段階でのご相談も歓迎です。
査定は無料、秘密厳守でお伝えします。

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ステップ3:媒介契約を結ぶ

査定結果を比較し、信頼できる不動産会社が見つかったら、媒介契約を結びます。これは「この会社に売却活動を依頼します」という正式な契約です。

媒介契約には3種類あり、それぞれ特徴が異なります。

一般媒介専任媒介専属専任媒介
依頼できる会社数複数社OK1社のみ1社のみ
自分で買主を見つけた場合直接取引OK直接取引OK不動産会社を通す必要あり
レインズへの登録任意7日以内に義務5日以内に義務
活動報告の頻度義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上
契約期間定めなし(一般的に3ヶ月)最長3ヶ月最長3ヶ月

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どれを選ぶべきかは物件や状況によりますが、「専任媒介」を選ぶ方が最も多いのが現状です。1社に集中して任せることで、その会社が広告費や人員を積極的に投入してくれるメリットがあります。一方で、不動産会社の対応に不安がある場合は、一般媒介で複数社に並行依頼する選択肢もあります。

詳しくは「媒介契約の3種類 — 一般・専任・専属専任の違いと選び方」で解説しています。

売り出し価格はこの段階で決める

媒介契約を結ぶ際に、売り出し価格(実際にポータルサイトなどに掲載される価格)を決めます。査定額をそのまま売り出し価格にする必要はなく、多少上乗せして出すことも、あえて査定額通りで出すことも可能です。ただし、相場からかけ離れた高値で出すと、問い合わせが入らず時間を浪費するリスクがあります。「売り出し価格の決め方」も参考にしてください。

媒介契約書の確認

ステップ4:売却活動がスタートする

媒介契約を結ぶと、不動産会社が売却活動を開始します。具体的には以下のことが行われます。

レインズへの登録。専任・専属専任の場合は義務です。レインズに登録されると、全国の不動産会社が物件情報を閲覧できるようになり、買主側の不動産会社から問い合わせが入るようになります。

ポータルサイトへの掲載。SUUMO・HOME'S・at homeなどに物件情報が掲載されます。写真の枚数や物件コメントの質が反響に大きく影響するため、不動産会社がどのような広告を作成するか確認しましょう。

チラシ・DM。周辺エリアへのチラシ投函やダイレクトメールも、特に一戸建て・土地の売却では有効な手段です。

売主がこの段階でやること

売却活動中、売主がやるべきことは大きく2つです。①不動産会社からの活動報告を確認すること。問い合わせの件数、内覧の予約状況、反応の傾向などを定期的に確認し、必要であれば価格の見直しや広告内容の改善を依頼します。②内覧の準備をすること。これは次のステップで詳しく説明します。

ステップ5:内覧に対応する

購入を検討している方が実際に物件を見に来る「内覧」は、売却活動のクライマックスです。内覧の印象が購入の決め手になることは非常に多いため、しっかり準備しましょう。

内覧前にやっておくこと

整理整頓と清掃。リフォームの必要はありませんが、水回り(キッチン・浴室・トイレ)の清掃と、物の量を減らして広く見せる工夫は効果的です。特にマンションでは、玄関を入った瞬間の印象が大きく影響します。

換気と明るさ。内覧前にすべての窓を開けて換気し、照明をすべて点けておきましょう。暗い部屋は狭く感じられるため、カーテンも開けておくのが基本です。

居住中の場合。住みながら売却する方は、生活感を適度に残しつつ清潔感を保つバランスが大切です。ペットの臭い対策、洗濯物の片付け、お子さんのおもちゃの整理など、「お客様を迎える」意識で準備してください。

内覧のコツについては「内覧で売れる家・売れない家の違い」で詳しくまとめています。

ステップ6:購入申込み・条件交渉

内覧後、購入を希望する方から「購入申込書(買付証明書)」が提出されます。これは正式な契約ではなく、「この条件で買いたい」という意思表示です。

交渉の主なポイント

価格。売り出し価格に対して値引き交渉が入ることは珍しくありません。「値引きに応じるかどうか」「どこまで下げるか」は、不動産会社と相談しながら判断します。

引渡し時期。買主の住宅ローン審査にかかる期間や、売主の引っ越し準備によって調整します。一般的には契約から1〜2ヶ月後です。

その他の条件。「エアコンは残すのか撤去するのか」「境界の確定は誰が行うか」など、細かい条件もこの段階で詰めます。

値引き交渉への心構え

値引き交渉は「失礼なこと」ではなく、不動産取引では一般的なプロセスです。重要なのは、感情的にならず、データに基づいて判断すること。相場や問い合わせ状況を踏まえて、不動産会社のアドバイスを聞きながら冷静に対応してください。

売買契約の締結

ステップ7:売買契約を結ぶ

条件が合意に至ったら、正式に売買契約を締結します。通常、不動産会社の事務所で行われ、所要時間は1〜2時間程度です。

契約当日の流れ

重要事項説明買主に対して、不動産会社の宅地建物取引士が物件の詳細情報や契約条件を説明します。売主もその場で内容を確認できます。

②売買契約書の読み合わせと署名・押印。契約書の各条項を確認し、双方が署名・押印します。売主にとって特に重要なのは、契約不適合責任の範囲と期間、手付解除の条件、ローン特約の有無です。

③手付金の受領。買主から手付金(一般的に売買価格の5〜10%)を受け取ります。

契約書のチェックポイントについては「不動産売買契約書の読み方」で解説しています。

契約後にキャンセルはできるか

契約後のキャンセルは可能ですが、ペナルティが発生します。売主からの解除は手付金の倍額返還(手付倍返し)、買主からの解除は手付金の放棄(手付流し)が原則です。また、買主が住宅ローンの審査に落ちた場合は、ローン特約により白紙解除(ペナルティなし)となるのが一般的です。

ステップ8:決済・引渡し

契約から1〜2ヶ月後、いよいよ決済・引渡しです。通常、買主が住宅ローンを借りる金融機関で行われ、所要時間は1〜2時間です。

当日の流れ

①残代金の受領。売買価格から手付金を差し引いた残額を、買主から受け取ります。

②住宅ローンの完済(ローンが残っている場合)。受け取った代金からローン残債を一括返済し、抵当権を抹消します。金融機関の担当者がその場で抹消書類を渡してくれます。

所有権移転登記の手続き。司法書士が法務局に登記申請を行います。売主・買主ともに書類への署名と本人確認が求められます。

④固定資産税等の精算。引渡し日を基準に、固定資産税・都市計画税を日割り計算で精算します。

⑤鍵の引渡し。物件の鍵(スペアキーを含む)を買主に渡し、売却完了です。

各費用の支払いもこの日に

決済日には、仲介手数料の残額(契約時に半額を支払っている場合)、登記費用、その他の精算金もまとめて支払います。「当日いくら必要で、手元にいくら残るか」を事前に不動産会社に確認しておきましょう。売却にかかる費用の全体像は「不動産売却にかかる費用のすべて」で詳しく解説しています。

決済・鍵の引渡し

ステップ9:確定申告

不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日に、確定申告が必要です。売却益(譲渡所得)が出た場合はもちろん、損が出た場合でも、税金の還付を受けるために申告した方がお得なケースがあります。

売却益が出た場合

譲渡所得税が課税されます。ただし、マイホームであれば3,000万円特別控除が使えるため、多くの場合、実質的な税負担はゼロまたは少額で済みます。控除を受けるためにも確定申告は必須です。詳しくは「不動産売却後の確定申告」をご覧ください。

売却損が出た場合

マイホームの売却で損が出た場合、一定の条件を満たせば給与所得などと損益通算でき、所得税・住民税が軽減されることがあります。

確定申告を忘れると

3,000万円特別控除などの特例は、確定申告をしなければ適用されません。「税金がゼロになるから申告不要」ではなく、「ゼロにするために申告が必要」です。期限を過ぎても申告はできますが、延滞税がかかる場合があるため、忘れずに手続きしてください。

よくある質問

Q. 売却にかかる期間はどのくらいですか?

福岡市内のマンションであれば1〜3ヶ月、一戸建ては3〜6ヶ月、土地は3〜12ヶ月が目安です。ただし、価格設定・立地・物件の状態によって大きく変わります。相場に合った適正価格で出すことが、早期売却の最大のポイントです。

Q. 住みながら売却できますか?

はい、住みながら売却する方が多数派です。居住中でも内覧対応は可能ですし、生活感があることで「実際に住んだときのイメージ」が伝わりやすいメリットもあります。空室にしてから売る必要はありません。

Q. 売却にかかる費用はいくらですか?

主な費用は仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税)、印紙税(1〜6万円程度)、登記費用(1〜3万円程度)です。合計で売買価格の4〜5%が目安です。詳しくは「不動産売却にかかる費用のすべて」をご覧ください。

Q. ローンが残っていても売却できますか?

はい、売却代金でローンを完済できれば問題ありません。売却代金で足りない場合も、住み替えローンや任意売却などの方法があります。詳しくは「住宅ローンが残っている家の売り方」で解説しています。

Q. 売却を途中でやめることはできますか?

はい、売買契約を結ぶ前であれば、いつでも売却活動を中止できます。媒介契約の解除に違約金はかかりません(不動産会社が特別に支出した広告費等を請求される可能性はありますが、一般的ではありません)。契約後のキャンセルはペナルティが発生するため注意が必要です。

「売却の流れを把握しておくと、不動産会社との打ち合わせがスムーズになりますし、次に何が起きるか分かっているだけで安心感が違います。この記事で全体像をつかんでいただいたうえで、個別のステップは関連記事で深掘りしてみてください」

Base-up 久保 塁