「2027年から所得税が上がる」という報道を見て、不安になっていませんか。結論から言うと、今回強化されるのは所得が数億円規模の方を対象にした追加課税(ミニマムタックス)であり、給与所得だけの方や、一般的なマイホーム売却には影響しません。一方で、不動産や株式の売却でまとまった利益が出る方にとっては、2026年中に売るか・2027年以後に売るかで税額が変わり得る、無視できない改正です。
この改正、あなたに影響する?
※ 譲渡益を含む年間所得が概ね2億円を超える見込みなら、2026年中の譲渡と2027年以後を比較する価値があります
この記事の内容
1. 何が変わるのか — ミニマムタックスの強化内容
ミニマムタックス(正式名称:極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)は、2025年分の所得税から始まった、超高所得層向けの追加課税制度です。株式や不動産の売却益は分離課税で税率が一定(所得税15%等)のため、所得が大きくなるほど実効税率がむしろ下がるという逆転現象(いわゆる「1億円の壁」)を是正する目的で作られました。
この制度が、2026年度の税制改正により2027年分以後、大幅に強化されます。
控除額が半分になり税率が上がることで、これまで「自分には関係ない」だった水準の方にも射程が届くようになります。証券会社の試算では、株式売却益5億円+不動産譲渡益5億円のケースで、2026年までは追加納税ゼロだったものが、2027年以後は約1億円の追加納税が生じる例が示されています。
2. 計算の仕組み — なぜ「売却益が大きい人」に効くのか
ミニマムタックスの計算はシンプルです。
追加納税額の計算式(2027年分以後)
(基準所得金額 − 1.65億円)× 30% − 通常の所得税額
→ この結果がプラスなら、その差額を追加で納税
※ 基準所得金額=給与などの総合課税所得+株式・不動産の譲渡所得等の合計(一部除外あり)
ポイントは、比較対象の「通常の所得税額」が、譲渡益については15%でしか計算されていないことです。給与に対する所得税は累進で最高45%まで上がるため、給与が多い人はもともと税額が大きく、ミニマムタックスにかかりにくい。一方、所得の大半が税率15%の売却益で構成される年は、30%との差が大きく開くため、追加納税が発生しやすくなります。
つまりこの制度は「毎年の高給取り」ではなく、不動産や株式をまとめて売却して、その年だけ所得が跳ね上がる人にこそ効く仕組みです。
3. 不動産売却への影響 — 長期譲渡の税率15%との関係
所有期間5年超の不動産を売却した場合の税率は、所得税15.315%(復興特別所得税含む)+住民税5%=約20%です。このうちミニマムタックスと比較されるのは所得税部分の15%。
ざっくりした目安として、その年の所得がほぼ譲渡益だけで構成される場合、譲渡益の合計が概ね3.3億円を超えるあたりから追加納税が発生し始めます((X−1.65億円)×30% が X×15% を超えるライン)。給与や事業所得との組み合わせによってはこれより低い水準でも影響し得るため、2億円を超えそうなら一度試算というのが実務的な線です。
福岡市の不動産でこの規模の譲渡益が現実になるのは、たとえば次のようなケースです。
- 収益ビル・一棟マンションの売却 — 天神・博多エリアを中心に取得時から価格が大きく上昇している物件
- 複数物件の同時売却 — 相続した物件の整理、法人化に伴う資産の入れ替えなど
- 広い土地の売却 — 再開発区域周辺や、市街化が進んだエリアの古くからの所有地
- 不動産と株式の売却が同じ年に重なる — 基準所得金額は合算されるため、別々の年に分ければかからなかった税金が発生することも
4. 影響しない人 — マイホーム売却の特例はこれまでどおり
強調しておきたいのは、この改正で一般の方の不動産売却の税金は1円も変わらないということです。
- 居住用財産の3,000万円特別控除 — 従来どおり使えます。福岡市内のマイホーム売却の大半は、そもそもこの控除で譲渡益が消えます
- 10年超所有の軽減税率 — 従来どおり。6,000万円以下の部分は所得税10%等に軽減されます
- 相続空き家の3,000万円特別控除 — 従来どおり
- 所得税の累進税率表そのもの — 変更されていません。「2027年から全員の所得税が上がる」わけではありません
「増税」という言葉だけが独り歩きしていますが、対象は明確に絞られています。ご自身が対象かどうか不安な方は、まず譲渡所得の基本的な計算方法で譲渡益の規模を把握するところから始めてください。
5. 2026年中に売るべきか — 判断の考え方
対象になり得る方にとって、実務上の論点は一つです。「同じ物件を2026年中に譲渡するのと、2027年以後に譲渡するのとで、手取りがいくら変わるか」。
ただし、税金の差額だけで売却時期を決めるのはおすすめしません。判断材料は3つあります。
- 税額の差 — 税理士による試算。所得の構成(給与・事業・他の譲渡)で結果が大きく変わるため、概算式での自己判断は危険です
- 市況 — 福岡市の不動産価格は上昇局面が続いてきましたが、金利環境次第で局面は変わります。1年待つ間の価格変動リスクと税額差を天秤にかける必要があります
- 売却にかかる時間 — 収益物件や広い土地は、買い手が見つかって決済に至るまで半年以上かかることも珍しくありません。「2026年中の譲渡」に間に合わせるなら、動き出しは早いほど選択肢が残ります(譲渡の時期は原則として引渡し日ベース。契約日ベースの選択など細部は税理士にご確認ください)
6. 福岡市の売主にとっての意味
福岡市は天神ビッグバン・博多コネクティッドをはじめとする再開発で、中心部の不動産価格が大きく上昇してきました。取得時には想定していなかった規模の含み益を抱えている所有者の方は、市内中心部を中心に確実に増えています。
含み益が大きいことは喜ばしい一方で、税制の変わり目には「いつ売るか」が手取りを左右します。当社は福岡市の売買仲介の現場で、税理士と連携しながら「税引き後の手取りベース」で売却プランを組むことを基本にしています。ミニマムタックスの試算そのものは税理士の領域ですが、その前提になる「いくらで・いつまでに売れそうか」は、地場の売買実績からリアルな数字をお出しできます。
7. よくある質問
Q. 2027年から所得税は全員上がるのですか?
いいえ。強化されるのはミニマムタックスで、対象は所得が数億円規模の方に限られます。給与所得だけの方や一般的なマイホーム売却には影響ありません。所得税の累進税率表自体は変わりません。
Q. どのくらい強化されるのですか?
控除額が3.3億円→1.65億円に半減、税率が22.5%→30%に引き上げられます(2027年分以後)。対象になるラインが下がり、これまで無関係だった所得水準でも追加納税が生じる可能性があります。
Q. 3,000万円特別控除を使うマイホーム売却にも影響しますか?
通常は影響しません。3,000万円特別控除や10年超所有の軽減税率はこれまでどおりです。問題になるのは、控除後もなお譲渡益等が億単位に達するケースだけです。
Q. 売却時期はどう判断すればよいですか?
譲渡益を含む年間所得が概ね2億円を超える見込みなら、税理士への試算依頼をおすすめします。ただし税額差だけでなく、市況と売却に要する期間を含めた手取り総額での比較が本筋です。
